がんセンター長挨拶

中瀬先生

三重大学がんセンター センター長
中瀬一則(血液内科)

 がんは、昭和56年より日本人の死因の第1位を占めており、年間30万人以上の方ががんで亡くなっています。また、厚生労働省研究班の推計では、生涯でがんに罹る可能性は男性の2人に1人、女性の3人に1人であるとされています。さらに、これから高齢者の方が増加していくことを考えると、今後ますますがんでお亡くなりになる方が増加していくことが予想されます。
 その一方で日本人が罹るがんの種類に変化がみられることがわかっています。この10年間で胃がんや子宮がんの死亡率、罹患率は横ばいになっているのに対して、食生活の欧米化が進んでいることなどにより、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどの増加が指摘されています。
 このようにがんを取り巻く状況が変化している中でわが国のがん医療の水準に関しては地域間格差や施設間格差が指摘され、特に標準的な化学療法や放射線療法の提供体制が不十分であり、緩和ケアが治療の早い時期からの導入がなされていないことなど、がん患者さんの立場にたった医療の面での立ち遅れが目立っています。
 厚生労働省はじめわが国の政府はこのような現状を考慮し、がん対策のより一層の推進を図る目的でがん対策基本法を平成19年4月1日より施行しました。この法律は今までの医療関係の法律と異なり、がん患者さんの意向を尊重すべきことを重視していることが大きな特徴となっています。

 三重大学医学部附属病院がんセンターは平成18年8月に設立され、三重大学医学部の総力を結集して、効率的で全人的ながん診療に取り組んでいます。主な活動として、緩和ケアチームを結成して、身体的な苦痛だけでなく、精神心理的な苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアをがん診療の早期の段階から提供することにより、患者さんの生活の質を少しでも改善できるようにお手伝いさせて頂いております。
 また、がんの治療方針についてのセカンドオピニオンや経済的、社会的問題などがん診療に関係するさまざまな相談に応じるがん相談支援を院内の福祉支援センターの協力のもとに実施しております。
 がんの診断や治療方針の決定が困難な症例については定期的に開催されるtumor board(腫瘍症例検討会)で病理医、放射線診断医とともに関連の各専門診療科の医師が一同に集まり、正確な診断、適切な治療法の選択を迅速に進めております。
 抗がん剤による治療については、必要に応じて、入院をせずに自宅での生活や仕事を継続しながら、外来通院で安心して治療を受けられるように外来化学療法室の整備を進めております。がんに関するさまざまな情報についても、患者会との交流会や市民公開講座を企画させていただき、普及、啓蒙に努めております。
 また、平成19年1月より、三重大学医学部附属病院は三重県のがん診療連携拠点病院に指定されております。県内4箇所のがん診療連携拠点病院である伊勢赤十字病院、松阪中央総合病院、三重中央医療センター、鈴鹿中央総合病院と定期的に協議会を開催して三重県内のがん診療の問題点について検討していくとともに、県内の他の病院、医院ともがん診療ネットワークを構築し、三重県のがん患者さんがさらに質の高いがん医療が受けられるような体制作りを進めていく予定ですのでよろしくお願い申し上げます。