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各疾患の治療

肝臓,胆道,膵臓のがん

 肝胆膵外科では肝臓,胆道(胆嚢・胆管),及び膵臓のがんに対する外科治療を行っております。がんの外科治療といっても,手術のみでがんを治癒(根治的治療)させることは困難ですので,術前・術後の抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせた治療を行っています。因みに,一口に「がん」といっても様々な種類があり,それぞれ別々の病気と考えるべきです。たとえ同一の臓器から発生したがんでも、組織型(顕微鏡での癌の分類)により予後(余命)や効果のある抗がん剤の種類は異なることを銘記してください。

肝がん

肝臓から発生するがん(原発性肝がん)は,肝細胞がんと胆管細胞がん(肝内胆管がん)で95%を占め,その他に肝細胞・胆管細胞混合がん,胆管嚢胞腺がんなどがあります。原発性肝がんの大部分(90%)は肝細胞がんで,その85%〜90%はB型またはC型型の肝炎ウイルスによる感染(うち3/4はC型)が原因です。一方,胆管細胞がんでは肝炎ウイルスとの関連性はありません。

肝細胞がんの治療には,肝切除,穿刺療法(ラジオ波焼灼療法RFA),肝動脈塞栓術,肝移植(脳死肝移植,生体肝移植),化学療法(抗がん剤治療)などがあります。肝細胞がんでは,慢性肝炎や肝硬変を合併し,種々の程度の肝機能障害を伴っていますので,治療法の選択は,がんの進行度と肝機能障害の程度の両者を考慮して決定されます。がんがそれほど進んでいなくて,肝機能が比較的保たれている場合は,肝切除が第1選択となります。最近,当科では肝表面に近い肝細胞がんに対して,腹腔鏡下肝部分切除を施行しています。肝機能不良な場合は,肝切除以外の治療が第1選択となりますが,当科では2002年3月より生体肝移植を開始し,肝硬変合併肝細胞がんにも積極的に施行し良好な成績を得ています。生体肝移植療法は多くの疾患で保険適応となっていますが,肝硬変合併肝細胞がんもミラノ基準(腫瘍径が5cm以下で単発か,3cm以下で3個まで)を満たせば保険適応となります。

胆管細胞がん(肝内胆管がん)では,肝機能障害を伴うことは少ないので,がんがそれほど進んでいない場合は,肝切除が第1選択となります。胆管細胞がんは,胆管や血管(肝動脈,門脈)への浸潤を来すことが多く,がんの遺残のないような根治的肝切除が困難なため,最近,当科では膵癌治療と同様に術前に抗がん剤と放射線照射を組み合わせた化学放射線療法を行い,がんの縮小を計ってから肝切除を行うようにしています。

胆道がん(胆嚢がん,胆管がん)

肝臓から分泌された胆汁が十二指腸に流れ出るまでの経路を胆道といい、胆嚢管という細いらせん状の管を介して、胆汁を一時的に貯留しておく袋状の部分を胆嚢といいます。胆道は肝内胆管,肝外胆管,胆嚢(胆嚢管を含む)からなり,肝外胆管から発生したがんを胆管がん,胆嚢および胆嚢管から発生したがんを胆嚢がんといいます。なお,肝内胆管から発生したがんは胆管細胞がん(肝内胆管がん)といい,これは原発性肝がんに分類されます。

胆嚢がんは、高い確率で胆石を合併し、その頻度は60%前後といわれます。胆嚢がんと胆石の合併率が高いことから、胆石による何らかの影響が発癌に関与している可能性があります。しかし、胆嚢がんの場合の胆石保有率は高いが、逆に胆石症で胆嚢がんができる確率は5%未満と多くはありません。したがって、胆石そのものよりも胆石症による胆汁の変化や胆嚢の炎症が発癌に関与していると考えられています。超音波検査の普及で、胆嚢に腫瘍が発見される機会が増加しています。胆嚢の腫瘍には悪性腫瘍である胆嚢がん以外に腺腫や各種のポリープなどの良性腫瘍が数多くあります。したがって、胆嚢腫瘍をただちに胆嚢がんと考える必要はありませんが、専門医による確実な診断を受けることが大切です。胆嚢がんの治療は,抗がん剤や放射線療法の効果が低いことから,外科治療(手術)が第1選択となります。早期胆嚢がんでは胆嚢摘出術や拡大胆嚢摘出術が施行されますが,進行癌では肝切除を伴った胆嚢・肝外胆管切除が施行されます。

胆管がんは肝外の胆管から発生したがんで,発生部位(肝臓側から膵臓側へと胆汁の流れる方向から分類)により肝門部胆管がん,上部胆管がん,中部胆管がん,下部胆管がん,十二指腸乳頭部がん(Vater乳頭部がん)に分類されます。胆管がんの治療は,胆嚢がんと同様に抗がん剤や放射線療法の効果が低いことから,外科治療(手術)が第1選択となります。がんの発生部位により術式が異なり,一般に肝臓側から発生した場合には肝切除が,膵臓側から発生した場合は膵頭十二指腸切除が施行されます。

胆道がんのなかでも最も治療が困難なのが,肝門部胆管がんです。当科の成績は日本のトップレベルを維持していますが,最近では治療成績をされに向上させるために,術前に抗がん剤と放射線照射を組み合わせた化学放射線療法を行い,がんの縮小を計ってから手術を行うようにしています。

膵がん

膵臓は胃の背側(背中側)にあり、十二指腸に接した部から脾臓に近接した部までに及ぶ細長い臓器であり、十二指腸側を膵頭部、膵臓側を膵尾部、中央部を膵体部と呼びます。膵臓の中には、膵臓で作られた膵液(消化酵素を含有)を十二指腸まで運ぶ管である膵管が通っています。膵管は、十二指腸側に近づくにつれて合流し、最後は太い2本(主膵管、副膵管)になって、十二指腸につながります。主膵管は、十二指腸につながる前に胆嚢から胆汁が流れてくる総胆管と合流し、十二指腸乳頭部を形成し十二指腸につながっています。

膵管から発生したがんを膵管がんとよびますが、その90%以上は浸潤性膵管がん(通常の膵がんで、治療成績が不良)と呼びます。その他に予後のよい膵がんとして膵管内乳頭粘液性腫瘍(かつては粘液産生膵腫瘍と呼ばれていました)があります。

膵がん(浸潤性膵管がん)は代用的な難治がん(消化器系から発生したがんのなかで最も治療成績が不良)でありますが、唯一の根治的治療は膵切除術です。当科では2004年12月より膵がんの根治性を目指して術前化学放射線療法を併用した血管合併切除を積極的に施行し,生存率の向上が得られつつあります。特に術前化学放射線療法を導入することにより、膵癌の切除率(全国主要施設の平均40%)は導入前の50%から80%と著明に増加しています。