専門治療、専門外来の紹介

放射線治療

放射線治療の特徴

　がん治療の三本柱は、手術、放射線治療、抗がん剤治療といわれていますが、当科では放射線治療全般を担当しています。放射線治療単独で行うこともありますが、多くの場合、集学的治療の一環として、他科と協力して治療にあたっています。当科の年間の新患者数は約550例で、代表的な疾患の患者さんのおおよその数は、乳癌：50例、肺癌：50例、頭頸部癌：70例、肝、胆、膵癌：30例、前立腺癌20例、子宮頚癌30例などです。

　放射線治療は「体にやさしく、きらずになおす治療」といわれ、体の機能を温存して治療するという点に特徴があります。外科的に切除すると、切除された臓器の働きはなくなりますが、放射線治療では、機能や形態を保ったまま、がんを消すことを目指します。このような根治的な放射線治療の対象になるのは、喉頭がん、咽頭がんなどの耳鼻咽喉科領域のがんや、子宮頸がん、膣がんなどの婦人科領域のがんなどです。これらのがんでは、手術成績と放射線治療による成績はほぼ同等といわれています。最近増加の著しい前立腺がんに対しても、放射線治療が多く行われるようになってきています。

　また、他の治療法との組み合わせ、すなわち抗がん剤治療や手術と組み合わせて放射線治療を行う、いわゆる集学的治療の中での役割も重要になってきています。乳がんに対しては、がんの部分だけ外科的に摘出し、その後、放射線治療を行う、乳房温存療法がよく行われています。肺がんや食道がんでは、抗がん剤治療（化学療法）と併用して治療を行う化学放射線療法が一般的となっています。

　その他、がんによる様々な症状を緩和する目的でも放射線治療は有効です。がんの骨転移は通常、疼痛が強く、患者さんの生活の質（Quality of life）を下げる要因ですが、骨転移巣に対しては、2週間程の短期間の照射で疼痛緩和をはかります。進行がんの患者さんでは、体力的な問題で手術や抗がん剤治療を受けられないこともありますが、このような状態でも部分的に放射線をあてることで、体力を奪わずに症状を緩和することが可能です。これも「体にやさしい」といわれるひとつの所以です。

放射線治療の方法

　当科では、高エネルギー放射線治療装置（ライナック）2台と、小線源治療装置1台で治療を行っています。

　日常的に多くの照射を行っているのがライナックで、これは体の外側から患部に対して放射線をあてる方法で、外照射といいます。1回の治療時間は数分で、この間に痛みや熱さを感じることはありません。照射直後に体調変化を来たすことはまずありませんので、外来通院による治療も可能です。これを土曜、日曜、祝日を除く毎日行います。病気の種類や程度によって照射回数は異なりますが、根治的な照射の場合では、30〜35回、すなわち6〜7週間かかることになります。

　副作用については、放射線治療では照射された部位への影響がほとんどで、全身的な変化はほとんどありません。例えば喉頭がんや乳がんでは、放射線があたった部位の皮膚が一時的に赤くなるといった症状が出ますが、これは治療終了後には元に戻りますし、治療期間中に気分が悪くなることはまずありません。また、子宮癌などで下腹部に放射線があたる場合は下痢をよくおこしますが、これも一時的な症状です。このように、がんのある場所（＝照射部位）によって副作用の出かたが異なりますので、治療前にそれぞれの患者さんに担当医から説明を行っております。

　小線源治療は、子宮頚がんなどでよく行われる治療で、小さな密封小線源（直径1.1mm）を患部に一時的に挿入し、直接がん組織へ放射線をあてる治療法です。年間40例程度で外照射より症例数は少ないですが、小さな領域にのみ大量の放射線があたり、数cm離れるとほとんど影響がないという特徴があり、患部に放射線を集中してあてることが可能です。以前はラジウム管を用いていましたが、最近では遠隔操作で高精度の照射を行う治療装置を使用しています。子宮頚がんのみならず、線源が細いことを応用して、胆管がんの治療で胆管内に線源を挿入する治療や、肝がんの血管内腫瘍塞栓に対して血管内照射も可能です。また当科では、早期の肺癌に対して気管支に小線源を挿入する方法を工夫し、高い治療効果をあげています。

放射線治療外来について

　放射線治療の受付は、各診療科からの紹介という形になっています。院内では各診療科から治療申し込みがあり、他病院からのご依頼では、紹介状を持って来て頂いています。外来診察は予約制となっていますので、他院からの場合は紹介医、あるいは患者さんご本人より電話で初診日の予約をとって頂いています。

　初診から治療開始までの流れは、担当医が診察、および治療の説明を行った後、治療計画という作業に入ります。当日行われる場合もありますが、後日行われる位置確認撮影を含め、計画には通常数日を要し、その後治療開始となります。