ラジオ波治療

 三重大学では、2,000年から肝癌に対してRFAを開始し、2,002年からは肺癌、腎癌、骨軟部腫瘍、副腎腫瘍に対し治療適応を拡大してきました。現在まで、のべ2,000人以上の患者様にRFAを施行しています。保険適応は肝RFAのみですが、肺・腎・骨RFAは先進医療が終了し、現在は自費診療として実施しています。
主な成績を紹介します。

肝細胞癌に対するRFA

 腫瘍径が5cm以下、腫瘍個数が5個以内であれば基本的に肝動脈塞栓術を行った後にRFAを行っています。この併用治療を受けているのべ患者数は年間200人程度です。放射線治療科ではこの併用治療の有効性を発表してきました。特に早期の肝細胞癌でこの治療は有効です。早期の肝細胞癌は一般的に主腫瘍径が5cm以下単発、または主腫瘍径が3cm以下で腫瘍個数が3個以内であるとされています。これら患者様の生存率は、外科切除と同等の成績です。

図1a:肝臓の右葉に最大経5cmの肝細胞癌を認める(矢印)


図1b:血管造影。肝細胞癌は血流の多い腫瘍として描出されている(矢印)。


図1c:動脈塞栓術。腫瘍を栄養する血管を選択的に閉塞させる。


図1d:動脈塞栓術後。腫瘍血管は閉塞している。


図1e:ラジオ波凝固療法(RFA)。電極を肝細胞癌内に挿入し、癌を焼いていく。


図1f:RFA後の造影CT。肝細胞癌周囲にも焼灼が加えられている。


図1g. 三重大学における早期肝細胞癌の生存率:肝切除と肝動脈塞栓術併用RFAの比較。
生存率に有意差はみられていない。


転移性肝腫瘍に対するRFA

 RFAは転移性肝癌にも有効です。現在まで約100人の転移性肝癌患者に対してRFAを行っています。

図2a:胃癌からの肝転移。腫瘍径は5cm。


図2b:転移肝腫瘍に対するRFA。


図2c:RFA1年後の造影CT。腫瘍は縮小している。15ヶ月間無再発生存中である。


肺癌に対するRFA

 肺癌は悪性腫瘍の死因の第一位です。手術のみが有効な治療法とされていますが、手術適応になる症例は20%-30%程度です。化学療法や放射線治療が手術不能症例に対して行われてきましたが、それらの成績はまだまだ満足すべきものではありません。当教室でも2,002年より肺癌に対するRFAを開始し、その有用性と限界を報告してきました。症例数は年々増加しており、現在では年間のべ120-130人の肺RFAを施行しています。我々は2007年に大腸癌からの肺転移に対する肺RFAの成績をまとめて報告しました。腫瘍径が3cm以下で、肺以外の転移がなければ3年生存率は78%で手術と全く遜色のない成績でした。肺RFAは今後肺癌治療の柱の一つとなる可能性があると考えられています。

図3a:2cmの肺癌を右下葉にみる(矢印)。この腫瘍に対しRFAを施行した。


図3b:RFA1年後腫瘍は消失した。左上葉に新しい肺癌が出現した(矢印)。この新しい病変もRFAで治療した。


図3c:初回RFAより1年半後。両葉の肺癌は空洞化し消失した。


腎癌に対するRFA

 現在まで60人の腎癌患者に対してRFAを行っています。以前に片方の腎臓を摘出され、残存腎に腎癌が再発した症例も多数治療しています。RFA後の局所再発は腫瘍径が4cm以内であればほとんどありません。今後間違いなく有効な治療法として定着していくものと考えられます。

図4a:直径2cmの腎癌(矢印)。


図4b:RFAを腎癌に施行後5日目。腎癌の造影効果は消失している(矢印)。


図4c:2年後腎癌は縮小し、造影効果も認めない

骨腫瘍に対するRFA

 転移性骨腫瘍や多発性骨髄腫の痛みは、患者のみならず家族のQOLも低下させます。骨腫瘍に対するRFAの最も強調すべき利点は除痛効果に優れ、その発現も速やかな点です。現在まで骨腫瘍のRFAは約80例、100病変に対し行っています。痛みの強い患者様全員で除痛効果がみられています。

図5a:多発性骨髄腫患者のMRI。胸椎2椎体に骨髄腫の浸潤をみる(矢印)。麻薬を極量使うも痛みはとれず副作用による、食欲不振、便秘が著明であった。


図5b:RFA後、痛みは消え、鎮痛剤の投与も必要なくなった。MRIで胸椎浸潤部位の信号が低信号化している。除痛効果のみならず、骨髄腫自体に対してもRFAは有効な治療である。


そのほかのRFA

 副腎腫瘍や皮膚腫瘍、リンパ節転移、筋肉転移等の手術が困難な症例にもRFAを行っています。