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  3. Ohnishi S. Murata M. Kawanishi S. DNA damage induced by hypochlorite and hypobromite with reference to inflammation-associated carcinogenesis. OCl-およびOBr-は炎症部位に生成する生体内抗菌物質であり、OCl-は水道水の塩素消毒にも使われている。一方で塩素消毒による発がんリスクが指摘されているためDNA損傷性とその機構について検討した。その結果OCl-は単独で、OBr-はGSH存在下で酸化的DNA損傷をおこすこと、特にグアニンを顕著に損傷することが明らかとなった。炎症部位における発がんにおいて、OCl-の遺伝子毒性が関わっている可能性が示唆された。

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  5. Ohnishi S. Kawanishi S. Double base lesions of DNA by a metabolite of carcinogenic benzo[a]pyrene. 発がん性大気汚染物質ベンゾピレンの発がん機構としては、その代謝物であるエポキシドによるDNA付加体形成が重視されている。本研究では別の代謝物であるベンゾピレン-7,8-ジオンが、銅イオンと生体内還元物質NADHの存在下で酸化的にDNAを損傷することを示した。またDNAの塩基配列でグアニンとピリミジンが隣接した部位において、連続した二塩基を特異的に損傷することが明らかとなった。

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  7. Hirakawa K. Oikawa S. Hiraku Y. Hirosawa I. Kawanishi S. Catechol and hydroquinone have different redox properties responsible for their differential DNA-damaging ability. [Journal Article] Chemical Research in Toxicology. 15(1):76-82, 2002 Jan.

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  9. Ohkuma Y. Hiraku Y. Kawanishi S. Sequence-specific DNA damage induced by carcinogenic danthron and anthraquinone in the presence of Cu(II), cytochrome P450 reductase and NADPH. ダントロンは緩下剤や染料の製造などに使用される植物中の天然成分であるが、動物実験では発がん性が証明されている。ダントロンはNADHおよびCu(II)の両者の存在下で酸化的にDNAを損傷した。また、チトクロームP450還元酵素を加えた場合、低い酵素濃度でDNA損傷をもたらした。ダントロンはNADHあるいは酵素的に還元され、酸化還元サイクルを介して酸化的DNA損傷を起こすことにより、発がん性を示す可能性が示唆された。

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  11. Midorikawa K. Murata M. Oikawa S. Hiraku Y. Kawanishi S. Protective effect of phytic acid on oxidative DNA damage with reference to cancer chemoprevention. フィチン酸は、動物実験で大腸がん等の抑制効果が報告されているが、そのメカニズムについては明らかではない。我々はH2O2と微量金属による酸化的DNA損傷に対するフィチン酸の効果について検討した。フィチン酸は酸化的DNA損傷に対し低濃度で抑制効果が認められた。これまで我々が報告してきたビタミンEなどの抗酸化剤とは異なり、フィチン酸は酸化促進作用もなく、DNA損傷抑制機構を有するため、がんの化学予防剤として安全性が期待できると考えられる。

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  13. Murata M. Ohnishi S. Kawanishi S. Acrylonitrile enhances H2O2-mediated DNA damage via nitrogen-centered radical formation.アクリロニトリル (ACN) はアクリル繊維やニトリルゴムの原材料として用いられている。 ヒトに肺癌をおこすという疫学調査があり、また、ラットでの脳腫瘍、乳癌等が報告されている。アクリロニトリルの発がん機構として、その代謝物であるエポキシドのDNA付加体形成が考えられているが、他の発がん機構として酸化的 DNA損傷が認められており、その1つの機序として我々はACNの酸化的 DNA損傷の増強作用を見い出した。

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  15. Sakano K. Oikawa S. Murata M. Hiraku Y. Kojima N. Kawanishi S. Mechanism of metal-mediated DNA damage induced by metabolites of carcinogenic 2-nitropropane. 工業溶剤として広く用いられている2-Nitropropane (2-NP)はラットの雄で肝癌を発生させることが報告されている。我々は2-NPの代謝産物であるN-Isopropylhydroxylamine (IPHA)とhydroxylamine-O-sulfonic acid (HAS)がCu(II)またはFe(III)EDTA存在下で酸化的にDNAを損傷することを見い出し、この代謝産物による酸化的DNA損傷が2-NPの発がん性に重要な働きを果たしていることを示した。

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  17. Oikawa S. Hirosawa I. Hirakawa K. Kawanishi S. Site specificity and mechanism of oxidative DNA damage induced by carcinogenic catechol. 環境発がん物質カテコールは医薬品等の原料であり、食品中やタバコの煙にも含まれている。さらに、ベンゼンの代謝産物でもある。カテコールによる酸化的DNA損傷機構とアポトーシスの誘導について検討した結果、生体内還元物質NADHとCu(II)存在下において低濃度でチミン残基を強く損傷した。HL-60細胞においてカテコールによるアポトーシスの誘導が認められたが、同一条件下の過酸化水素耐性株HP100細胞では認められなかった。従って、カテコールは過酸化水素の生成を介して酸化的にDNAを損傷し、アポトーシスを誘導すると考えられる。

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  19. Kawanishi S. Inoue S. Oikawa S. Yamashita N. Toyokuni S. Kawanishi M. Nishino K. Oxidative DNA damage in cultured cells and rat lungs by carcinogenic nickel compounds. ニッケルの発がん機構の解明のため変異や発がんにつながる8-OH-dGの定量を行った。その結果、培養細胞では、Ni3S2において8-OH-dG量が増加した。一方、動物実験では、ラットに種々のニッケル化合物を経気道的に投与した結果、Ni3S2に加え緑色NiO、黒色NiO、NiSO4でも肺に炎症が認められ、さらに8-OH-dG量も増加していた。これらの結果から、肺では活性酸素生成による直接的な酸化的DNA損傷と炎症により生成される一酸化窒素 (NO) およびO2- が反応したペルオキシナイトレート (ONOO-) による間接的なDNA損傷の2つの機構があることが解明された。

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  21. Ohnishi S. Murata M. Oikawa S. Totsuka Y. Takamura T. Wakabayashi K. Kawanishi S. Oxidative DNA damage by an N-hydroxy metabolite of the mutagenic compound formed from norharman and aniline. ノルハルマンはヘテロサイクリックアミンの一つでタバコ煙中や調理した食物中に含まれる。それ自体では変異原性を示さないが、代謝過程でアニリンと結合して変異原物質となる。我々は、ノルハルマンとアニリンが結合した化合物の水酸化代謝物を用いて、銅イオン存在下で酸化的DNA損傷をもたらすこと、さらに生体内還元物質NADHによってDNA損傷性が著しく増強することを見いだした。

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  23. Murata M. Bansho Y. Inoue S. Ito K. Ohnishi S. Midorikawa K. Kawanishi S. Requirement of glutathione and cysteine in guanine-specific oxidation of DNA by carcinogenic potassium bromate. 臭素酸カリウム(KBrO3)は食品添加物の一種で、小麦改良剤としてパン製造に用いられる。ラットに腎癌をもたらすことや腎臓中に 8-OHdGを増加させることが知られている。KBrO3 は生体内還元物質であるGSHやシステインにより還元され活性種を生じ8-OHdGを生成し、特にpoly G配列での損傷性が強いことが明らかになった。培養細胞を用いた実験においても8-OHdGの生成が観察され、KBrO3の発がんには 8-OHdGの生成が関与すると考えられた。

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  25. Ohkuma Y. Kawanishi S. Oxidative DNA damage induced by a metabolite of carcinogenic o-anisidine: enhancement of DNA damage and alteration in its sequence specificity by superoxide dismutase. 発がん物質オルトアニシジンは染料や医薬品の製造などに幅広く利用されている。Cu(II)の存在下でアニシジンの代謝産物であるアミノフェノールは低濃度でDNAを損傷した。DNA損傷の塩基特異性についてはチミンとシトシンがよく損傷された。また、8-oxodGの生成量を増加させた。以上の結果から、オルトアミノフェノールが酸化されてアミノフェノキシルラジカルとなる過程で活性酸素が生成し酸化的DNA損傷を起こすと考えられる。アニシジンの発がん性には、それらの代謝物によるDNA損傷性が関与することを明らかにした。

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  27. Midorikawa K. Kawanishi S. Superoxide dismutases enhance H2O2-induced DNA damage and alter its site specificity. スーパーオキシドを速やかに消去するSODは、最近H2O2存在下で、ペルオキシダーゼ作用を有することが報告されている。我々はH2O2と微量金属による酸化的DNA損傷へのSODの影響について検討した。SODによりH2O2とCu(II)による酸化的DNA損傷が増強し、塩基特異性の変化がみられた。このことからSODは生体内で酸化的損傷を抑制する働きがある一方で、増強する可能性があり、発がん性増強への関与が示唆された。

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  29. Hishita T. Tada-Oikawa S. Tohyama K. Miura Y. Nishihara T. Tohyama Y. Yoshida Y. Uchiyama T. Kawanishi S. Caspase-3 activation by lysosomal enzymes in cytochrome c-independent apoptosis in myelodysplastic syndrome-derived cell line P39. アポトーシスは多くの場合、ミトコンドリアの機能障害、チトクロムcの放出、caspase 3の活性化という経路をたどる。しかし、今回我々は、骨髄異形成症候群由来細胞であるP39におけるetoposideによるアポトーシスが、ミトコンドリア膜電位の変化、チトクロムcの放出を介さないことを認めたため、その機構を解析した。その結果、P39細胞において、etoposide処理によるアポトーシスは、初期の細胞内ATPレベルの減少によるリソソームの機能低下を伴うことが判明し、リソソーム内酵素のcathepsin Lがcaspase 3を活性化し、アポトーシスに至る事が示唆された。

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  31. Oikawa S. Tada-Oikawa S. Kawanishi S. Site-specific DNA damage at the GGG sequence by UVA involves acceleration of telomere shortening. 最近、染色体の末端部に存在するテロメア繰り返し配列 (5'-TTAGGG-3')nの短縮が老化のプログラムに関与するとの報告がなされている。我々は、UVA 照射量に依存して、ヒト培養細胞中に有意に8-oxodG が増加すると同時に、テロメア繰り返し配列の短縮促進を認めた。また、合成したテロメア繰り返し配列を含む 32P-DNA 断片にUVA を照射した結果、テロメア繰り返し配列中の 5'-GGG-3' の中央の G に特異的に8-oxodGが生成することが明らかとなった。従って、UVAによるテロメア繰り返し配列の短縮促進が皮膚の老化促進に関与すると考えられる。

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  33. Hiraku Y. Yamashita N. Nishiguchi M. Kawanishi S. Catechol estrogens induce oxidative DNA damage and estradiol enhances cell proliferation. エストロゲンは乳がんや子宮がんを起こすことが知られている。エストラジオール(E2)自身は乳腺細胞の増殖作用を有するが、DNA損傷性はなかった。一方その代謝物のカテコールエストロゲンは極めて低濃度で酸化的DNA損傷を起こしたが、細胞増殖作用はE2に比べて弱かった。したがってエストロゲンの発がんにおいては、E2の代謝物がイニシエーションに、E2自身がプロモーションに関与し、両者の協働的な作用が重要であると推察される。

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  35. Murata M. Tamura A. Tada M. Kawanishi S. Mechanism of oxidative DNA damage induced by carcinogenic 4-aminobiphenyl. 発がん性4-Aminobiphenyl(4-ABP)は、タバコ煙中に含まれ、喫煙による膀胱癌に寄与する可能性がある。従来、4-ABPのDNA損傷機構は付加体形成と考えられてきた。本研究では、4-ABPのN水酸化体代謝物がヒト培養細胞において酸化的にDNAを損傷することを明らかにした。また、生体内還元物質や金属イオン存在下で酸化還元サイクルが形成され、著しくDNA損傷した。4-ABPの発がん機構には酸化的DNA損傷も重要な役割を果たすことが示唆された。

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  37. Kawanishi S. Hiraku Y. Oikawa S. Mechanism of guanine-specific DNA damage by oxidative stress and its role in carcinogenesis and aging. [Review] [85 refs] 化学物質や紫外線により生成された活性酸素種は塩基特異的なDNA損傷を起こし、発がんや老化に重要な役割を果たす。塩基特異性は活性種の種類により異なる。特にGG配列の5’末端側のグアニンには最高被占軌道の大部分が分布するため、酸化的損傷を受けやすい。DNA 損傷の塩基特異性は活性酸素種の酸化還元電位、DNA塩基のイオン化ポテンシャル、および金属イオンの塩基特異的なDNAへの結合により決定されると考えられる。

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  39. Kawanishi S. Hiraku Y. Sequence-specific DNA damage induced by UVA radiation in the presence of endogenous and exogenous photosensitizers. [Review] [20 refs] 太陽紫外線はヒトに発がんをもたらしうる。太陽紫外線の95%を占めるUVAは光増感剤の存在下で、グアニンから励起した光増感剤への電子移動によるType I、一重項酸素生成を介したmajor Type II、ス−パーオキシド生成を介したminor Type IIのそれぞれの機構を介して塩基特異的な酸化的DNA損傷を起こし、皮膚がんをもたらすと考えられる。紫外線発がんにおいては、内因性の物質やキノロン系の抗菌剤などが光増感物質として作用する可能性がある。

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  41. Ohnishi S. Murata M. Degawa M. Kawanishi S. Oxidative DNA damage induced by an N-hydroxy metabolite of carcinogenic 4-dimethylaminoazobenzene. 発がん性アミノアゾ染料のDNA損傷機構としては従来付加体形成で説明されてきた。本研究では、肝臓がんを引き起こすジメチルアミノアゾベゼン(DAB)のN水酸化体代謝物は、銅イオン存在下で酸化的にDNAを損傷することが分かった。また、生体内還元物質であるNADHにより酸化還元サイクルが形成されて著しくDNA損傷性が増強した。DABの発がん機構には付加体形成のみならず、酸化的DNA損傷も重要な役割を果たしている可能性が示唆された。

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  43. Hiraku Y. Oikawa S. Kuroki K. Sugiyama H. Saito I. Kawanishi S. Amplification of bleomycin-induced DNA cleavage at cytosine residues 3' to GGG sequences by pyrrole triamide. 我々は抗癌剤の効果を増強する薬剤の開発を目的として、ブレオマイシンの一種であるペプレオマイシンによるDNA切断へのピロールトリアミド化合物の効果について検討した。その化合物の添加により、特にGC-richな部位においてDNA切断は増強した。フットプリンティング法の結果から、その化合物はGC-richな部位ではなく、むしろその近傍に結合することによりDNAの構造を変化させてDNA切断の増強をもたらすと考えられた。

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  45. Ohnishi S. Murata M. Fukuhara K. Miyata N. Kawanishi S. Oxidative DNA damage by a metabolite of carcinogenic 1-nitropyrene. 1-ニトロピレンは排気ガスに含まれる発がん性の大気汚染物質である。本研究ではニトロ還元酵素により代謝されて生成する1-ニトロソピレン(1-NOP)を用いて検討した。その結果、1-NOPが生体内還元物質であるNADHにより還元されてできた中間体が、自動酸化する過程で活性酸素を生成し、銅イオン存在下で酸化的にDNAを損傷することが明らかとなった。従って、ニトロピレン類の発がん機構の一つとして代謝物ニトロソ体による酸化的DNA損傷の関与が示唆された。

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  47. Yamashita N. Kawanishi S. Distinct mechanisms of DNA damage in apoptosis induced by quercetin and luteolin. 多くのフラボノイドは抗がん作用が期待されており、その作用機構としてアポトーシス誘導が考えられている。一方、ケルセチンは抗がん作用のみならず発がん性の報告もあり、アポトーシス誘導についてルテオリンと比較検討した。ケルセチンは酸化的DNA損傷を介して、ルテオリンはトポイソメラーゼ阻害作用を介してアポトーシスを誘導していることが明らかとなった。したがって、がんの化学予防剤として、酸化的DNA損傷性のないルテオリンは安全に利用しうることが示唆された。

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  49. Hiraku Y. Kawanishi S. Distinct mechanisms of guanine-specific DNA photodamage induced by nalidixic acid and fluoroquinolone antibacterials. ニューキノロン系抗菌剤ロメフロキサシン(LFLX)およびキノロン系抗菌剤ナリジクス酸(NA)は、UVA照射により実験動物に皮膚腫瘍を起こす。NAは二本鎖DNAにおけるGG配列の5'末端側のグアニンで損傷を起こしたが、LFLXは単独のグアニンでも損傷を起こした。NAではグアニンからUVAで励起されたNAへの電子移動を介して、一方LFLXは一重項酸素を生成してDNAを損傷すると考えられ、これらの機構が薬剤による紫外線発がんでは重要と考えられる。

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  51. Kawanishi S. Oikawa S. Kawanishi M. Sugiyama H. Saito I. Strekowski L. Wilson WD. Amplification of pepleomycin-mediated DNA cleavage and apoptosis by unfused aromatic cations. 抗がん剤による副作用が化学療法において重要な問題となっている。我々が研究を行っているアンプリファイアーとはそれ自身ではDNAを切断しないが、抗がん剤の作用を増強する薬剤である。非縮合環状DNA結合化合物RW-12は5'-GC-3'および5'-GT-3'配列で抗がん剤ペプロマイシンによるDNA切断を顕著に増強した。さらに、ヒトHL-60細胞においてDNA切断およびアポトーシスが観察された。以上の結果からRW-12はアンプリファイアーとして有効な物質であり、効果的な化学療法を可能にすると考えられる。

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  53. Ito K. Kawanishi S. Sequence specificity of ultraviolet A-induced DNA damage in the presence of photosensitizer. 太陽紫外線はヒトに発がんを有する。UVAは光増感剤の存在下で間接的にDNAを損傷して発がんをもたらすと考えられる。我々は、ヒトがん関連遺伝子から得たDNA断片の5'末端を32Pでラベルし、Maxam-Gilbert法を応用してDNA損傷の塩基配列特異性を解析した。UVAは光増感剤の種類により、電子移動によるType Iあるいは活性酸素生成を介したType IIの機構を介して塩基配列特異的なDNA損傷を起こすことが明らかとなった。

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  55. Tada-Oikawa S. Oikawa S. Kawanishi S. Determination of DNA damage, peroxide generation, mitochondrial membrane potential, and caspase-3 activity during ultraviolet A-induced apoptosis. 太陽紫外線による発がんは、UVBによる直接的なDNA損傷が重要な役割を果たしているとされていたが、最近UVAも発がん性を有するとの報告がなされた。UVAは生体内の光増感物質を介してDNAを損傷する可能性がある。今回、ヒト培養細胞を用いてUVAによるDNA損傷とアポトーシスの機構を解析した。その結果、UVAは酸化的DNA損傷、さらにDNA鎖切断を引き起こし、ミトコンドリア膜電位の減少後、caspase 3の活性化を経てアポトーシスに至る事が解明された。

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  57. Ohnishi S. Murata M. Oikawa S. Hiraku Y. Kawanishi S. Copper-dependent DNA damage induced by hydrazobenzene, an azobenzene metabolite.ヒドラゾベンゼンはアゾ染料の原料として工業的に重要であり、またアゾ染料の基本構造となるアゾベンゼンの代謝産物でもある。本研究においてヒドラゾベンゼンのDNA損傷機構を検討した結果、銅イオン存在下ではヒドラゾベンゼンが自動酸化してアゾベンゼンになり、その過程で生成する過酸化水素が銅イオンと相互作用して活性種を形成し、酸化的なDNA損傷をもたらすと考えられた。

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  59. Midorikawa K. Murata M. Oikawa S. Tada-Oikawa S. Kawanishi S. DNA damage by dimethylformamide: role of hydrogen peroxide generated during degradation. 有機溶媒であるDimethylformamide (DMF)はその暴露労働者での発がん性が疑われている一方、動物実験では発がん性が見い出されていない。我々はDMFの劣化に伴い過酸化水素が生成されることを見い出し、これに金属イオンが加わることでDNA損傷をきたすことを示した。DMFの劣化のメカニズムを解明し、劣化DMFの使用が暴露労働者の発がんに関与する可能性を示した。

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  61. Murata M. Yamashita N. Inoue S. Kawanishi S. Mechanism of oxidative DNA damage induced by carcinogenic allyl isothiocyanate. わさび、辛子に含まれる辛味の成分であるイソチオシアン酸アリル (allyl isothiocyanate; AITC)は食品添加物としても使用されているが、発がん性が疑われている。我々はAITCを含むイソチオシナネート類からSH基が生成され、さらに活性酸素が生成しCu (II)存在下で酸化的DNA損傷を生じることを明らかにし、イソチオシアネート類の発がん性の検討の必要性を示唆した。


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