【研究内容】
 血管内の血漿蛋白,白血球,血小板,血管内皮細胞には,創傷部位からの出血の阻止,侵入異物の排除,傷害組織の修復と再生などを司る様々な血栓止血関連因子(凝固因子・凝固阻害因子・線溶因子・細胞増殖因子・サイトカインなど)が存在する。これらの分子の先天性欠損症の多くは胎生致死や出血症,血栓症などをきたすことから,血栓止血関連因子の多くは生命の維持・進展に不可欠である。当研究室では,これまで血栓止血関連因子の生理的・病理的役割を分子・細胞・組織・個体のそれぞれのレベルで研究し,その成果に基づき、血栓症や臓器障害に対する診断薬・治療薬の開発を行ってきた。一例として,1987年に世界で最初に遺伝子クローニングした血管内皮蛋白のトロンボモジュリンの組換え蛋白は数年以内に新しい血栓症治療薬として上梓され,臨床応用される予定である。
 近年,血栓止血関連因子の機能異常は,血管炎や動脈硬化などの血管病変の原因となり,心筋梗塞や脳梗塞,エコノミークラス症候群などの血栓塞栓症を誘発し,また,肝硬変や肺線維症,糖尿病性腎症などの多くの組織のリモデリングと密接に関わることが明らかになってきた。さらに最近,血栓止血関連因子は腫瘍(がん)の増殖や転移,血管新生,神経細胞などの機能維持と障害の発生に関わると共に,障害組織の修復・再生にも重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。
 この背景の下,当研究室では以下の課題について研究を行っている。
(1) 血栓症と臓器障害の発症に関わる血管内皮の炎症と凝固反応の分子機構の研究
(2) 血液の流動性維持に関わる血管内皮の凝固制御反応の分子細胞機構の研究
(3) 血管内皮の機能維持と障害に関わる細胞間接着装置の分子医学的研究
(4) 肺・気道疾患における組織リモデリングの分子細胞機構の研究
(5) 癌細胞の浸潤転移、血管新生を制御する血栓止血関連因子の研究
(6) 肝硬変・肝再生の制御調節に関わる血栓止血関連分子のプロテオミクス研究
(7) 血栓症・腫瘍などを予防する機能性食品素材の開発研究

【指導内容】
 上記内容に関連した基礎的遺伝子操作技術(遺伝子クローニング・DNA構造の解析・遺伝子発現の解析),組換え蛋白質の発現調製,細胞内シグナル伝達機構の解析,血栓症や腫瘍の診断・治療薬の開発に必要な基礎的手技等について実験実習を中心に指導する。