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住所

〒514-8507
三重県津市江戸橋2丁目174

上部消化管

はじめに

三重大学消化管外科の上部消化管グループは主に食道・胃の疾患の診療にあたっています。胃癌はヘリコバクターピロリ菌の除菌治療の普及により近年減少傾向にあるものの現在もなお罹患数、死因臓器別分類でも男女ともに上位を占めています。また食道癌の罹患率は年々増えつつあります。日本における癌治療はこの20年で大きく変遷してきました。20世紀後半までは胃癌・食道癌ともに拡大手術が普及しましたが、近年は特に、早期癌に対しては鏡視下手術(内視鏡治療、腹腔鏡手術、ロボット手術)などの体にやさしい低侵襲手術が発達し、手術の質を落とさず早期に回復できるようになってきています。進行癌に対しては従来からの手術がさらに進化したほか、欧米を中心に進歩してきた新規薬剤がわが国でも承認され,着実な生存期間の延長を認めるようになってきました。薬物療法は,これまでの抗癌剤のほか分子標的剤、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤などの開発が日進月歩で発達し多様化してきています。外科的治療とこれらの薬物療法とさらに場合により放射線治療を組み合わせる、いわゆる集学的治療が進歩してきております。当科では,標準治療の普及に貢献するとともに,更なる治療成績改善を目指して臨床・研究に励んでいます。

ロボット支援下切除術について

当院では、2017年に胃癌手術に導入したロボット支援による鏡視下手術の適用を、2018年11月に食道癌手術に適応としました。この手術は、「ダ・ヴィンチ  サージカルシステム(以下、ダヴィンチ)」という機器を使用し、医師が手術部位の3次元画像を見ながら4本のロボットアームを操作して手術するものです。現在三重県において、ダヴィンチによる手術を消化器疾患に導入し実施しているのは当院のみとなります。尚、ロボット支援下手術は、日本内視鏡外科学会技術認定取得医、ダヴィンチ使用の認定を正式に受けた医師がダヴィンチ使用の研修を受けたスタッフとともに行います。
ダヴィンチによる手術は、鉗子の稼働領域が広いことや手ぶれが無いことなどから、通常の鏡視下手術に比べ、より精緻な手術が可能であること、また低侵襲であるため、開腹手術と比較して感染症や合併症の頻度が低下し、結果的に入院期間の短縮と早期の社会復帰が可能であることがメリットとされています。
2018年4月より、施設要件をみたした施設に限り保険診療が可能となり、当院でも最先端の手術を保険診療で提供できるようになりました。

(図1)ダビンチ手術の様子
(図1)ダビンチ手術の様子

食道癌

食道癌の治療には、主に手術治療・放射線治療・抗癌剤治療があり,それぞれを組み合わせた集学的な治療が必要となります。食道癌に関する診断・治療については,がん診療ガイドラインとして公開されています(http://jsco-cpg.jp/guideline/09.html)。当院では,消化管外科・消化器内科・腫瘍内科・放射線科・耳鼻咽喉頭頸部外科など他科合同のカンファレンスを定期的に行い、三重大学附属病院(診療科を問わず)を受診された患者さんがより早く適切な治療がうけれるようなシステムを構築しております。また、県内の多くの基幹病院とも連携しており、その後の治療でも複数の診療科間や病院間でもで緊密に連携をとることにより一人一人に最適な治療法を提供できるよう努力しております。

食道は気管・気管支,大血管,肺や心臓など重要な臓器に囲まれていることもあり,食道癌手術は専門性と難易度が高い手術となります。手術は,食道外科専門医,食道科認定医,内視鏡外科技術認定医を中心に取り組んでおり,2008年からは鏡視下手術を導入しました。鏡視下手術導入時は,胸部操作のみを鏡視下で行っておりましたが、2012年から腹部の操作にも鏡視下手術を導入しました。鏡視下手術は,従来の胸を大きくあける手術と比較して傷が小さく(図2)(肋骨を切離する必要がありません),術後の痛みが軽減できることや,術中の出血量を減少させることができます。開胸手術では平均出血量は700mlでしたが,鏡視下手術に移行後は,平均200mlに減少しました。また,食道は,頸部から胸部を通って腹部まで通過している消化管であるため,手術では頸,胸,お腹を切開する必要があります。

(図2)鏡視下手術は1㎝程度の傷を5カ所あけて行います。
(図2)鏡視下手術は1㎝程度の傷を5カ所あけて行います。

食道癌の手術は大きな手術となりますので,様々な術中術後の問題が生じる可能性があります。術中術後管理が発達した現在においてもこれら合併症を100%防ぐことはできません。主な合併症には,手術部位の出血や縫合不全、肺炎、反回神経(声帯を動かす神経です)麻痺や術後せん妄などがあります。食道癌手術を多く行っている施設においても、合併症率約41.9%(全国臨床統計データベースより)と発生が多いのが現状です。
当院では合併症発症を少しでも減らすために様々な術前準備や手技や周術期管理の工夫を行っており、縫合不全率の低下(13%→1.7%)や術後せん妄(53%→13%)、肺炎(23%→8%)の発症率低下などの効果を認めております。
さらに食道癌の手術の特徴として、手術後早期の嚥下機能低下(飲み込みがうまくできないこと)が多くあります。当院では耳鼻科咽喉頭頸部外科医・口腔外科医・理学療法士・癌専門看護師・栄養士を含めた専門チームで手術前から退院まで肺炎予防や術後の嚥下訓練(飲み込みの訓練)、栄養改善、食事指導など患者さんの診療にあたっています。
食道癌患者数は,2008年の鏡視下手術を導入以来増加し,現在まで180例の鏡視下手術を経験しております。(図3)2018年は食道切除50例(内視鏡切除も含む),化学放射線療法や化学療法は約20例となりました。

以上のように多面的な取り組みを行った結果、県内では唯一の食道外科専門医認定施設の認定を受けております。当科の食道癌の治療成績については日本食道癌学会・日本胸部外科学会の症例登録事業に参加することにより常に公開し、さらなる治療成績向上を目指して取り組んでおります。

(図3)食道癌手術数の推移
(図3)食道癌手術数の推移

(図4)食道癌手術後のステージ別5年生存率
(図4)食道癌手術後のステージ別5年生存率

食道良性疾患(食道アカラシア・胃食道逆流症)

当科では食道癌以外にも食道の病気に対する手術治療を行っております。
食道アカラシアは,原因不明の食道の機能異常で,食道の下部が狭くなることにより,食物が入らない,胸が痛む,嘔吐するなどの症状が起きてしまう病気です。食道アカラシアに対する手術は,食道下部の筋肉を一部切って狭くなった部分を広げると共に,胃の一部を食道に巻きつけることによって胃内容物の食道への逆流防止機構を付け加える手術を行います。
胃食道逆流症は,胃酸を中心とする胃の内容物が食道や口の中まで逆流して,胸やけや胸や胃が痛むなどの症状がでます。
基本的には薬物療法が治療の中心となりますが,薬物療法が有効でない方に対しては手術治療を行います。胃食道逆流症に対する手術は,胃の一部分を食道に巻きつけることによって胃の内容物の逆流を防止します。
当院ではこれらの食道疾患に対しても2008年から腹腔鏡下手術を導入しており,現在では臍の部分の傷口だけで手術をする単孔式手術も取り入れています。(図5)
当院での食道手術はすべて,食道外科専門医のチームが担当いたします。

(図5)単孔式手術の術後創[上に同様です
(図5)単孔式手術の術後創[上に同様です

胃癌

胃癌の治療には,大きくわけて外科的治療(内視鏡治療または外科的手術)と内科的治療(抗癌剤治療)があり,癌の進行度により胃癌治療ガイドラインに準じて治療方針の決定を行っています(胃癌治療ガイドラインの解説一般用2版カラー 胃癌学会http://www.jgca.jp/guideline.html)。

手術での根治が期待できる患者さんには可能な限り早期に手術(別項参照)を施行しています。また,我々は2000年から腹腔鏡下手術(腫瘍の切除までをすべて腹壁の4か所の1cm程の小さい傷のみで施行,再建などは3.5~4cm程の傷から行う)を導入し,現在まで約500例を経験しております(図6)。

(図6)胃切除症例数の推移
(図6)胃切除症例数の推移

(図7)胃癌手術数の推移
(図7)胃癌手術数の推移

腹腔鏡手術の技術は年々進歩し,出血量は少なく,術後在院日数が短縮(16→12日)されており,従来からの開腹手術と比べても癌の根治性を損なわずに患者さんの身体への負担を最小限に抑え,安全な手術を提供しております。2008年以降は,手術技術の向上に伴い,完全鏡視下手術(腫瘍の切除から再建までをすべて1cm程の小さい傷から施行する)も始め,さらなる低侵襲化に取り組んでおります。
手術のみでの根治が難しいとされる進行胃癌に対しては,手術治療と抗癌剤治療を併用して施行します。診断時に遠隔転移(胃からはなれた臓器やリンパ節にがんの転移をみとめること)がある場合は、手術で治すことが困難になります。その場合は、抗癌剤を主体として、場合により手術や放射線治療などを組み合わせた集学的な治療を行います。
現在、本邦では手術で治すことができない段階の胃癌(切除不能胃癌)の抗癌剤治の成績は中央生存期間13カ月と満足のいくものではありません。我々は2000年以降,抗癌剤加療後にタイミングを見計らって外科的手術を組み合わせる治療(腫瘍細胞縮小手術)を用いており、中央生存期間中央値は22.6か月と良好な成績を残しております(別図7,8)。食道癌治療と同様に、胃切除術後の患者さんの手術の不安や食生活の不安をできるだけ最小限にして退院して頂くため、理学療法士・癌専門看護師・栄養士・癌専門薬剤師を含めた専門チームで協力して患者様の診療にあたっています。

(図8)根治不能胃癌に対する治療戦略
(図8)根治不能胃癌に対する治療戦略

(図9)根治不能胃癌における腫瘍細胞縮小手術の成績
(図9)根治不能胃癌における腫瘍細胞縮小手術の成績

早期胃癌に対するセンチネルリンパ節を指標としたリンパ節転移診断と個別化手術の有用性に関する臨床試験(多施設共同試験)

鏡視下手術や集学的治療が進歩してしていますが、現在のガイドラインでは胃癌の手術の基本は胃を大部分切除することになります。胃切除後には逆流、胸やけ、腹部膨満感、腹鳴、下痢、ダンピング症状(眠気、冷感、動悸、めまいなど)、貧血、骨障害などのさまざまな障害がでます。これに着目して、早期胃癌に対しては癌治療の根治性を担保しつつセンチネルリンパ節(見張りリンパ節)に癌の転移があるかどうかを確認して手術の低侵襲化と機能温存を目的とした胃機能温存手術(胃をできるだけ温存する手術)を行う、多施設共同臨床試験に参加しています。すなわち、早期胃癌に対して,今後は胃の切除範囲をより小さくして患者さんの術後の生活の質をあげる目的です。具体的には、胃癌からのリンパ流を確認し、転移する可能性のあるリンパ節(これをセンチネルリンパ節または見張りリンパ節という)を術中に見つけ出してナビゲーションする手術で、そのリンパ節に転移がある場合は定型手術(胃を大部分切除)、ない場合は縮小手術(胃の上1/3を取る手術や胃を部分的に取る手術)を選択することができます。早期胃癌の患者様のリンパ節転移率は約10%であるため、リンパ節転移のない残りの90%の患者様にはできるだけ機能を温存して生活の質(QOL)をよくしようとする試みです。当院はこの臨床試験に参加しており患者様のご希望に応じて先進医療Bでこの手術を受けていただくことができます。またアプローチは腹腔鏡で可能であり、特に胃を小さく切る手術は腹腔鏡手術と内視鏡手術と両方のアプローチで手術を行う腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を施行しています。ただし、現段階ではこの術式は臨床試験ですので、詳細な適応や実際については担当医から十分説明させていただきます。

(図10)センチネルリンパ節検索
(図10)センチネルリンパ節検索

以上のように、患者さんの症状や癌の進行度に応じて様々な治療を組み合わせ、一人一人に最適な治療法を選択し、一人でも多くの患者さんが治療により長く元気に過ごせるように最大限の取り組みを行っております。