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研究内容

癌治療における補助栄養剤の開発

CRP値上昇は癌の予後不良因子

【図1】炎症反応と癌増殖・転移

癌の予後は、主に「癌の進み具合」(一般的に組織型、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無、手術根治度などの種々の因子)によって決定されます。その一方、「癌の進み具合」を決定づけるのは癌細胞自体の特徴だけでなく、宿主の腫瘍に対する炎症反応が予後に影響を与えることが報告されています。特に、宿主の炎症反応の指標として用いられるCRP(C-Reactive Protein:C反応性蛋白)値が、種々の固形癌での予後の指標として有用であるとの報告もみられるようになり、最近では、グラスゴー大学のグループが約27,000例の大腸癌をはじめとする様々な癌腫においてCRP上昇とともにアルブミン値低下を伴う症例では腫瘍発生部位に関わらず予後に与える因子として報告され、癌の特徴の一つとして注目されています。私どもの教室においても、「担癌患者における血中CRP値が上昇の炎症性サイトカインからみたメカニズム解明」、「血中CRP値が予後不良と関連していること」、などを報告してきました【図1】。すなわち、CRPの上昇伴う癌患者さんでは、炎症性サイトカインの一つであるIL-6(インターロイキン-6)の値が癌組織および血中で上昇していること明らかにしてきました。

抗炎症物質としてのレゾルビン

魚油や健康食品に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω‐3系列の多価不飽和脂肪酸は、古くから抗炎症作用、心血管保護作用、脳神経系保護作用などが知られています。最近、ω‐3系不飽和脂肪酸由来の代謝産物であるレゾルビン、プロテクチンと称される活性代謝産物は、炎症収束を促進する新しいタイプの抗炎症性脂質メディエーターとして注目されてきています。

慢性炎症を伴う癌患者では血中レゾルビンD1濃度が低下する

我々は、担癌患者におけるこの抗炎症性脂質メディエーターであるレゾルビン濃度と血中CRP値との関係を検討したところ、担癌患者においては、血中レゾルビンD1濃度が、血中CRP値により大きく影響を受けることを見出しました。図2に、各CRP値範囲を示す担癌患者におけるレゾルビンD1濃度を示しますが、CRP<0.5mg/dL症例と比較して0.5≦CRP<1.0mg/dLの症例、およびCRP≧1.0mg/dLの症例では、有意に血中レゾルビンD1濃度は低値を示しています。【図2】

【図2】
血中RvD1はCRP≧0.5大腸癌症例で有意に低下している

【図3】
 DHA高比率で癌増殖抑制能が高い

DHAは癌細胞のIL-6産生を抑制する

DHAおよびEPAの各配合比率別の大腸癌細胞株増殖能抑制効果について検証すると、DHA単独が最も細胞増殖抑制効果があり、DHA有意な配合比率で増殖能抑制効果があることがわかりました。【図3】さらに、培養上清中のレゾルビンD1濃度は、DHAの含有比率が多いほど高い値を示しました。また、癌細胞株をDHAに暴露した後の癌細胞IL-6産生能に与える影響についても検証しました。すると、DHA非暴露時の癌細胞株における24時間から72時間にかけて培養液中のIL-6濃度は経時的に上昇しますが、DHAを暴露した培養液中のIL-6濃度は24時間から72時間にかけて変化はなく癌細胞株よりのIL-6産生が抑制されました。

DHA強化サプリメント服用によりCRP値低下が期待される

固形腫瘍においては、治療前CRP値は、病理組織学的進行度に関わらない予後因子であり、特に、根治手術症例では、最も予後と相関する因子です。以上の観点から判断すると、担癌患者における血中CRP値を低下させることは、当該担癌患者さんの予後を著しく改善させることとなりますが、前記した癌患者における血中CRP値と血中レゾルビンD1濃度及びレゾルビンE1濃度の関係を考慮すると、代謝産物であるレゾルビンD1の濃度を上昇させるべく、DHAを強化したサプリメントを服用すれば、血中レゾルビンD1濃度の上昇が得られることとなり、その結果血中CRP値が低下し、担癌患者さんにおける予後を改善することが図れることとが期待されます。
我々は、この点を確認するために、ω‐3系列の多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含有する、担癌患者用サプリメント組成物において、血中レゾルビンD1濃度を上昇させるための組成物であるドコサヘキサエン酸の含有量を強化したサプリメントを開発(特願 2015-016653、癌患者の予後改善剤)し、10名のCRP上昇を伴う癌患者さんに投与しました。
統一したカロリーの食事摂取の下、高濃度DHAサプリメント(DHA:EPA=9:1)を1日4g(2g×2回)、1週間服用し、血中CRP値およびレゾルビンD1濃度の変動について評価しました。健常人におけるDHA・EPAの1日推奨摂取量は、わが国では1g以上であり、欧州では5g、米国では3gであること、また、CRP>0.5mg/dL以上を呈する癌患者におけるレゾルビンD1濃度は、健常人と比較して約25%減少していることから、被験者には、およそ1.3~6.3gが必要と考え、サプリメント組成物の臨床試験では、1日摂取量を、その範囲内である4g(EPA+DHA量として2.2g)としています。
1週間服用後、10例中8例で血中CRP値は低下し、10例中8例で血中レゾルビンD1濃度の上昇を認めました。上記の結果は、1週間の連続摂取の結果であり、さらに継続摂取を行えば、より効果的な血中レゾルビンD1濃度の上昇が認められるものと思われます。11月より、アイドゥ社の協力を得て製品化(「製品名 メガエール」)し、CRP上昇(CRP≧0.5mg/dL)を伴った癌患者さんを対象に長期服用に関する効果を調査する予定です。

DHA強化サプリメント「メガエール」発売

上記検証に基づいたDHA強化サプリメント「メガエール」をこのたび、アイドゥ社より11月に発売することとなりました。三重大学医学部附属病院内売店, アイドゥ―オンラインショップより購入可能です。

アイドゥ―オンラインショップ http://www.shop-ai-do.jp/