膵臓外科

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    岸和田昌之(実務担当):kishiwad@clin.medic.mie-u.ac.jp

    伊佐地秀司(責任者):isaji-s@clin.medic.mie-u.ac.jp


関連ウェブサイト:日本膵臓学会急性膵炎診療ガイドライン膵癌診療ガイドライン

    膵がん患者・家族をサポートするサイト:NPOパンキャンジャパン


<目次> 1.膵臓の解剖と機能,II. 膵癌(1. 膵癌の疫学,2. 膵腫瘍の分類, 3. 膵癌の症状・徴候と診断, 4. 膵癌の治療),III. 当科における膵癌の治療戦略と治療成績 ,IV. 膵炎(1.急性膵炎,2.慢性膵炎),

 

I.膵臓の解剖と機能

膵臓は,胃の後ろで十二指腸の内側からお腹を横切るような細長い臓器で,膵臓の後方には小腸に分布(養う)する流入血行である上腸間膜動脈(SMA)と,小腸からの流出血行(小腸から吸収された栄養素を肝臓に運ぶ静脈)である上腸間膜静脈・門脈(SMV・PV)があります.膵臓は便宜的に膵頭部(十二指腸とSMV・Pvの間),膵体尾部(SMV・Pvより外側)に分け,さらに膵体尾部を2等分して膵体部と膵尾部に分けます.膵臓には膵液を分泌する膵管があり,十二指腸乳頭部で胆管(膵内胆管)と合流して十二指腸に注いでいます.また膵臓にはインスリンやグルカゴンを分泌するランゲルハンス島があります.


  膵臓は外分泌機能と内分泌機能との2つの機能を果たしています.外分泌機能とは消化酵素(膵酵素)を分泌する機能で,胃から十二指腸に流入してきた食物(炭水化物,タンパク質,脂肪)は,膵酵素(アミラーゼ,リパーゼ,トリプシン,ホスホリパーゼA2など)の作用により,ブトウ糖,アミノ酸,脂肪酸などに分解されて小腸より吸収されます.内分泌機能と血糖を低下させるインスリンと血糖を上昇されるグルカゴンなどを血液中に分泌して,血糖のコントロールを行っています.


  従って,膵臓が悪くなると,消化酵素の分泌やインスリンの分泌が低下して,栄養障害(体重減少)や糖尿病(耐糖能異常)を来します.


II.膵癌

1. 膵癌の疫学

 がん情報サービス(ganjoho.jp)によると,2017年がん統計予測では,膵癌に罹患した患者数(罹患数)は39,800人と推計され,膵癌死亡数は34,100人と推計されています.がん死亡者数では男性で5位,女性で3位です.年間の罹患数と死亡数が近似していることから,膵癌は難治癌の代表といえます.男女ともに50歳以上から膵癌は増え,危険因子として、喫煙者は2.5倍の頻度で膵癌になりやすいいわれます.糖尿病の患者は,1.5~2倍膵癌になりやすいともいわれますが、膵癌のために二次性に糖尿病になる場合も少なくなく,危険因子がどうかはいまだ不明です.


 膵癌の治療成績は他の癌に比べると、男女ともよくありません.2006〜2008年にがんと診断された人のがん部位別5年相対生存率を示します.なお、5年相対生存率とは、あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標です.すなわち、あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかで表します.



2. 膵腫瘍の分類

 膵から発生する腫瘍は,膵外分泌系腫瘍,膵内分泌系腫瘍,分化方向不明な上皮性腫瘍に大別され,外分泌系腫瘍には漿液性嚢胞腫瘍(SCN),粘液性嚢胞腫瘍(MCN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),浸潤性膵管癌,腺房細胞癌があります.膵腫瘍の90%以上は浸潤性膵管癌であり,一般に膵癌といえば浸潤性膵管癌を指します.膵癌は難治癌の代表ですが,外科的に切除することが長期生存を可能にする唯一の治療です.なお,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は腺腫(良性腫瘍),非浸潤癌、微小浸潤癌、浸潤癌に分類され、浸潤性膵管癌より予後は良好で,予後良好な膵癌ともいわれます.


3. 膵癌の症状・徴候と診断

膵癌に特有の症状はなく,他に原因のみられない腹痛,腰背部痛,黄疸,体重減少は膵癌を疑って検査を進めることが重要です.切除可能例では無症状な患者さんが15%を占めます.有症状例は進行癌が多く,切除不能の割合が増加します.特に,急激な糖尿病の発生や悪化は膵癌を疑って積極的な検査を進めるべきです.血中膵酵素(アミラーゼ、エラスターゼ1)の上昇は腫瘍径が2cm以下の小膵癌でみられることが多いです.CA19-9を含む腫瘍マーカー(Span-1, DUPAN-2, CEAなど)は早期癌での異常率は低く,進行癌で上昇することが多いです.腹部超音波検査(US)は膵癌診断の最初のスクリーニングとして有用で,膵管の拡張や小嚢胞がみられる場合には,速やかに造影CTを行い、さらにMRCP,ERCP,超音波内視鏡(EUS)などで精査を進めます.

 膵癌ではこれまで細胞診や組織診による確定診断は困難でしたが、最近,超音波内視鏡下細胞診・組織診(EUS-FNA)により確定診断が出来るようになっています.当院(消化器・肝臓内科)ではEUS-FNABを積極的に施行しており,膵癌診断の正診率は90%を超えています.


4. 膵癌の治療

切除術としては、癌が膵頭部にある場合は,胃部分切除を伴う膵頭十二指腸切除(PD)が一般的ですが,近年は臓器温存の立場から幽門輪温存PD(PPPD)や亜全胃温存PD(SSPPD)が多く施行されています.また、癌が膵体部から尾部にある場合、膵体尾部切除が行われます.


 なお,PD, PPPD, SSPPD後の消化管再建で最も問題となるのが膵空腸吻合術です.膵空腸吻合術は縫合不全を来すと,消化液である膵液がお腹の中にもれて,周囲の血管壁を溶かして大出血を起こすことがあり,消化器外科医が最も注意を払う術式です.膵空腸吻合の発生率は一般の施設では15~30%ですが,当科の新しい術式として,Pair Watch Suturing Technique(2007.4より導入)を開発し,術式の標準化(術者による差違をなくす)を行い,良好な成績を得ています.

 膵癌に有効な抗がん剤としてゲムシタビン(ジェムザール®)、S-1、FORFIRINOX、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルなどが登場し、進行膵癌のみならず切除後の補助療法としても有効性が示されています.


III. 当科に於ける膵癌の治療戦略と治療成績

 難治癌の代表である膵癌の治療成績を向上させる目的で,当科では消化器・肝臓内科,放射線科の協力を得て,2005年2月から手術(S)を前提とした化学放射線療法(CRT)、すなわちCRTS(手術)を取り入れた新たな治療法を施行しています.


 肝転移,肺転移などの遠隔転移のない局所進行膵癌を対象とし,まず入院後に超音波内視鏡下細胞診・組織診(EUS-FNA)により膵癌と診断してから,CRTを開始します.放射線照射は3次元原体照射を5週間施行(週5日,土・日は休止)し,この間に抗癌剤(ゲムシタビン、S-1)の投与をします.CRT終了後,患者さんの体力の快復を目的に4~6週間休止します.この間にCRTの効果判定を目的に血液検査(CEA, CA-19-9などの腫瘍マーカー測定)と造影CT検査を行い,膵癌の切除が可能と判断されれば手術を施行します.CRTの効果が不十分な場合は、化学療法(抗癌剤)の継続します。切除が可能となったところで、手術を施行します。術後は30日目ぐらいから抗癌剤の補助療法を行います.

 

 CRTSの目的は,放射線照射と抗癌剤による治療で,腫瘍(癌)の縮小を計り,かつ手術操作(癌を切除するための剥離や切離)の際に癌細胞の遺残(取り残し)をなくすことです.スライドに示す患者さんは,膵頭部癌で門脈および上腸間膜動脈(SMA)への浸潤があり,SMAは360度の範囲で浸潤が認められるため局所進行切除不能膵癌と診断されました(赤矢印).まずCRTを2カ月間施行した後に,さらに抗癌剤投与(TS1+Gem)を継続し,1年後には腫瘍マーカー(CEA, CA19-9)は正常化し,CT画像でもSMA浸潤の軽減が認められたので門脈合併膵頭十二指腸切除を施行しました.切除標本ではがん細胞は90%以上が死滅しており,根治的切除(R0切除)が確認されました.

 

 NCRTの治療成績を示します. 2005年2月から2016年12月までに本治療(2011.10からは抗癌剤をジェムザール+TS1併用療法に変更)を307名の患者さんに施行しました.

 膵癌取扱い規約第7版(2016年)では、膵癌の治療方針を決定するために,まず膵癌を「外科的に確実に切除が可能かどうか」で3つに分けています.組織学的に癌の遺残のない手術(R0手術)が確実にできる「切除可能癌:R,組織学的(R1)あるいは肉眼的(R2)に癌遺残となる可能性が高い「切除可能境界癌:BR」,通常の手術では切除が不可能と考えられる「局所進行切除不能癌:UR-LA」の3つです.なお、BRはBR-PV(門脈系のみの浸潤)とBR-A(動脈系浸潤あり)に亜分類されます.ダイナミック造影CTによるR, BR-PV, BR-A, UR-LAの診断基準が明確に示されています.この診断基準により,当科のCRT施行例307例を分類すると,下の表のようになります.

 

 全症例,切除例の生存率を図に示します.CRT後に再評価ができた285例では,5年生存率はR:41.4%, BR-PV:23.2%, BR-A: 9.5%, UR-LA:11.8%でした.切除例178例の 5年生存率はR:51.3%, BR-PV:28.1%, BR-A: 15.7%, UR-LA:19.3%でした.


 BR膵癌の全国調査が施行され2016年の日本膵切研究会で発表されました。BR-膵癌835例のうち術前治療が492例に施行され、343例は術前治療なしで切除が施行されました。両群の治療成績を下図にしめします。有意に術前治療群が予後(治療成績)が良好でした.この成績はBR膵癌では術前治療をすることで、膵癌の治療成績が改善されることを示しています.


IV. 膵炎(急性膵炎,慢性膵炎)

 膵炎は急性膵炎と慢性膵炎に分類されます.急性膵炎は,腹痛を典型的な特徴とする膵の急性の病態と定義され、通常は膵の炎症疾患によって、血中あるいは尿中の膵酵素の上昇を伴います.慢性膵炎は,膵の非可逆的な形態学的変化という特徴をもつ持続的炎症疾患と定義され、典型的には、疼痛と機能の永続的低下の両者あるいは一方をもたらします.なお,急性膵炎は再発することもあり,また大部分の慢性膵炎患者は、急性再燃を示しますが、全経過を通じて無痛性のこともあります.

1.急性膵炎

(1)急性膵炎の疫学

 急性膵炎の発生頻度(年間10万人あたり)は国や地域により異なりますが,わが国では1987年が12.1人,2003年が27.7人と増加しています.男女比は2.2:1で,発生頻度のピークは男性50才代,女性70才代です.急性膵炎の原因はアルコールと胆石が2大成因で,男性ではアルコール性が多く,女性では胆石性が多いう特徴があります.

 厚生労働省の「難治性膵疾患に関する調査研究班」により急性膜炎の全国調査が施行されています。最新の調査では,2011年の1年間に急性眸炎として受診した患者数は63,080人であり,近年,増加傾向です。 男女比は1.9:1で,男性は 60歳代が最も多<(平均年齢58.5±16.9歳),女性は70歳代が最も多いです(平均年齢65.3±19.6歳)。急性膵炎全体に占める重症急性膵炎の害合は,2O%前後を推移しています。死亡率は2011年の調査では,全体では2.1%,重症例では10.1%と報告されています。高齢者ほど死亡率は高くなります.

(2)急性膵炎の病態 

 本症は,アルコールや胆石の十二指腸乳頭部嵌頓などが誘因となり,膵組織内で膵酵素が活性化されて膵組織が自己消化され,膵実質の炎症や脱落,壊死をきたす疾患です.80~90%は浮腫性膵炎で,その多くは軽症例ですが、10~20%は壊死性膵炎で,ショックに陥り多臓器不全を来たし,その死亡率は15~25%と高いものとなります,特に,膵壊死組織に細菌感染を合併した感染性膵壊死では死亡率は30~40%に達し,極めて治療が困難な病気となります.感染性膵炎では,かつては保存的治療のみでは死亡率は100%に達するといわれ,壊死巣除去術(ネクロゼクトミー)などの侵襲的治療が必要とされてきました.しかし,近年,非侵襲的な治療の開発や全身管理の進歩で治療成績はかなり改善され,感染性膵壊死に対してもIVR(放射線画像下治療)や内視鏡的インターベンションにより良好な成績が報告されるようになっています.



  われわれは,膵壊死組織への感染の成立機序と膵炎の重症化機序につき基礎的研究を行い,世界に先駆けて腸内細菌からの内因性感染,いわゆるbacterial translocationであることを明らかにしました.さらに膵壊死巣感染を予防する目的で,抗菌薬(抗生物質)の膵局所動注療法ならびに上腸間膜動脈(SMA)からのSMA動注療法に関する基礎的研究を行い,臨床応用に結びつけました.

 私(伊佐地)は,「急性膵炎の診療ガイドライン」の作成委員として,2003年の第1版から参加し,主に外科治療の項目を担当し,2015年版(第4版)では日本語と英語版の両方に参加しました.

(3)急性膵炎の治療

 絶食による膵の安静(膵外分泌刺激の回避),呼吸・循環管理,十分な除痛,膵局所合併症(感染性膵壊死,膵膿瘍,膵仮性嚢胞)の予防が基本となります.軽症では,一般病棟での管理が可能で,末梢静脈路を確保し十分な輸液を行います.重症例では,厳重な呼吸・循環管理が必須で、末梢静脈路・中心静脈路を確保するとともに,大量輸液を行いながら,臓器不全対策,感染予防(抗生剤投与)を行います.急性膵炎の病態は病期により異なり,重症例の発症後期(4週間以降)には経腸栄養を主体とした栄養管理と,感染性合併症対策が重要なポイントとなります.

 2012年に改訂された急性膵炎のアトランタ分類は,間質性浮腫性膵炎後に発生してくる「液体貯留」を,発症後4週以内の急性膵周囲液体貯留(APFC)と4週以降の膵仮性嚢胞(PPC)に分類し,壊死性膵炎後に発生してくる「壊死性貯留」を,発症後4週以内の急性壊死性貯留(ANC)と4週以降の被包化壊死(WON)に分類しています.感染性膵壊死(infected pancreatic necrosis)とは,ANCあるいはWONに細菌・真菌の感染が加わったものを指し,近年,集中治療やインターベンション技術の発達により,その死亡率は12~26%と低下してきていますが,いまだ高率です.

 壊死性膵炎の治療方針では,可能な限り発症後4週までは臓器サポートを行い,感染が疑われてもできるだけ抗菌薬などで保存的に治療を行い,WONとなるのを待ちインターベンション治療を考慮するのが望ましいです.インターベンション治療としては,かつては開腹ネクロセクトミーが主流でしたが,2010年に感染性膵壊死に対する低侵襲アプローチとしてstep-up approach法の有用性が報告されました.step-up approach法とは,初期治療は経皮的ドレナージを行い,改善がえられない場合は minimally invasive retroperitoneal debridementとしてvideo-assisted retroperitoneal debridement(VARD)を行う方法でです.その後、複数の低侵襲アプローチの成績が報告されるようになり,まず経皮的ドレナージや内視鏡的ドレナージを行い,改善が得られない場合はVARDや内視鏡的ネクロセクトミーを追加することが推奨されています.


2.慢性膵炎

(1)慢性膵炎の疫学

慢性膵炎の発生頻度(年間10万あたり)は,厚労省研究班全国集計では1992年の5.5,1999年の5.8に対し,2002年では14.4と著明に増加しています.慢性膵炎の成因は,2002年の全国集計ではアルコール性68%,原因不明の特発性21%,胆石性3%で,男女比は3.5:1です.男性ではアルコール性が77%,60才代がピークで,女性では特発性が50%、70才代がピークでです.

(2)慢性膵炎の病態 

膵臓の内部に,不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの慢性変化が生じ,膵臓の外分泌・内分泌機能の低下を伴う病態です.これらの変化は,持続的な炎症やその遺残により生じ,多くは非可逆的でです.慢性膵炎の発病機序には明確なものはなく,成因別にアルコール性,非アルコール性,遺伝性とに分類すると、それぞれの臨床像が異なることがわかります.アルコール性や特発性の慢性膵炎では膵管内に膵石が発生することが多く,別名「膵石症」とも呼びます.また,特殊な膵炎として自己免疫性膵炎があり,わが国で研究が盛んで,患者数も多く,最近注目されています.

(3)慢性膵炎の治療 

慢性膵炎の症状は,疝痛から持続鈍痛までのさまざまな上腹部痛を呈し,痛みはアルコール多飲,脂肪・蛋白の過剰摂取で誘発されます。膵外分泌機能が低下すると,脂肪・蛋白の消化障害により脂肪便や筋繊維便(消化不良の便)もみらます.膵の繊維化が進行するとランゲルハンス島への血流障害から糖尿病(膵性糖尿病)を併発します.慢性膵炎の多くは腹痛で発症し,以後腹痛は頻度・程度とも増加し,やがてある時期より腹痛は次第に軽減し,変わって膵内外分泌機能不全による症状が主体をなすようになります.このように長い経過をたどる疾患ですので,臨床像から代償期,移行期,非代償期と三つの病期に分類されます.治療にあたっては病期に応じた治療を行うことが大切です.


IV. 膵炎(急性膵炎,慢性膵炎)

 膵炎は急性膵炎と慢性膵炎に分類されます.急性膵炎は,腹痛を典型的な特徴とする膵の急性の病態と定義され、通常は膵の炎症疾患によって、血中あるいは尿中の膵酵素の上昇を伴います.慢性膵炎は,膵の非可逆的な形態学的変化という特徴をもつ持続的炎症疾患と定義され、典型的には、疼痛と機能の永続的低下の両者あるいは一方をもたらします.なお,急性膵炎は再発することもあり,また大部分の慢性膵炎患者は、急性再燃を示しますが、全経過を通じて無痛性のこともあります.

 急性の炎症(膵炎の再燃)を予防することが最も重要で,禁酒,脂肪制限食などによる膵庇護療法を行います.膵内外分泌機能低下に対しては,消化酵素剤の適切な投与,糖尿病を早期から治療することが大切です.膵石による主膵管の閉塞,仮性嚢胞や膿瘍などの合併症に対しては,内視鏡的ドレナージ術や外科的治療が適応されます.

慢性膵炎の外科的治療の適応は,(1) 頑固な疼痛を来す炎症性腫瘤,(2) 総胆管狭窄,(3) 十二指腸狭窄,(4) 膵管拡張と疼痛を伴う膵石症,(5) 合併症を併発した膵仮性嚢胞,(6) 膵癌との鑑別が困難,などがあげられます.慢性膵炎の術式には,膵管空腸側々吻合(Puestow手術,1958年発表),膵頭十二指腸切除(Traverso & Longmire, 1978年発表),十二指腸温存膵頭切除(Beger手術,1980年発表),膵頭部局所切除兼膵管空腸側々吻合(Frey手術,1987年発表)などがあります.

当科では,膵頭部を中心に膵石があり,膵頭部の炎症性腫瘤で総胆管狭窄,十二指腸狭窄などを併発した患者さんには,上記の術式のなかで最も効果的でかつ低侵襲な手術であるFrey手術を施行しています.私(伊佐地)は,1987年にカリフォルニア大学デイビス校のFrey教授のもとで,壊死性膵炎に対するネクロゼクトミーや,慢性膵炎に対するFrey手術を学びました.










 

 

 


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