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DIC研究の歴史
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DIC研究の歴史
 1972年にColmanらがDIC診断基準を作成してから種々のDIC診断基準が提案されてきたが、欧米ではDICの診断ならびに治療は積極的に行われてこなかった。
  1979年厚生省DIC診断基準が作成され、基礎疾患・臨床症状ならびに検査所見をスコア化することにより、DICの診断が簡単に行えるようになった。また、1987年には厚生省診断基準の改訂版が出され、PT比や分子マーカーの採用などが盛り込まれた。国内はもとよりアジア・欧米においても、この診断基準は普及を見ている。1992年には血小板数とFDPのみで診断する松田の試案が提案され、簡便で早期治療が行えることから、救急領域では好んで用いられている。この頃より、厚生省DIC診断基準改定の動きが盛んになった。1993年にはドイツの古城でDICのカンファランスが行われ、Müllar-Berghausらは「intravascular fibrin formation」の概念を提唱したが、当時のISTHではこの考えは認められなかった。また、1992年にはSIRSの概念が提唱され、重症敗血症に対する研究が進むきっかけとなった。さらに、敗血症に伴う臓器障害を評価する簡易なスコアリングシステムとして、SOFAスコア が普及し、臓器障害の多施設評価が容易となった。1999年ISTH/SSCでは、Taylorらを中心にDIC診断基準作成のためのワーキンググループを結成した。この頃から、重症敗血症などに対するアンチトロンビン)や活性化プロテインCなどの生理的プロテアーゼ阻害薬の臨床試験が行われるようになった。2001年ISTH/SSCは、DICをovert-DICとnon-overt-DICに分け、overt-DIC診断基準を提示するとともに、non-overt-DIC診断基準のための雛形を示した。
  現在、ISTH/SSCはovert-DICのプロスペクテイブスタデイを行いながら、non-overt-DIC診断基準案を作成中である。日本では日本DIC研究会、日本血栓止血学会学術委員会のDIC検討部会ができるなど、DIC診断基準の改定活動が盛んになった。2002年には日本救急学会が日本血栓止血学会と合同の委員会を作り、救急領域のDIC診断基準作成のための活動を開始した。
 
厚生省のDIC診断基準とISTHのovert-DIC診断基準
  厚生省診断基準 ISTHの
overt-DIC
診断基準
血小板数
(X1,000/μl)
50≧3点、80≧2点、120≧1点 100≧1点、50≧2点
PT(秒)(PT比) 1.67≦2点、1.25≦1点 3秒延長≦1点
6秒延長≦2点
フィブリノゲン
(mg/dl)
100≧2点、150≧1点 100≧1点
FDP
(μg/ml)
40≦3点、20≦2点、10≦1点 中等度増加:2点*
著明増加:3点*
臨床病態
症状
基礎疾患、出血症状、臓器症状:1点 基礎疾患必須
DICの診断 骨髄の巨核球数低下:4点
(出血症状、血小板数は除く)
その他:7点以上
5点≦overt-DIC

*FDP以外に、SFやD-dimerも含む。それぞれの診断基準は比較のため、一部改変。

救急領域のDIC診断基準案
点数
SIRS 血小板
(X104/μl)
PT フィブリノゲン
(mg/dl)
FDP
(μg/ml)
0
0〜2 12≦ 1.2> 350≦ 10>
1
≧3 12>
あるいは24時間以内に
30%以上の減少
1.2≦ 350> 10≦ <25
3
  8>
あるいは24時間以内に
50%以上の減少
    ≦25

DIC 5点以上あるいは4項目が1点以上

1) 血小板数減少はスコアー算定の前後いずれの24時間以内でも可能。
2) PT比(検体PT秒/正常対照値)ISI=1.0の場合はINRに等しい。各施設においてPT比1.2に相当する秒数の延長または活性値の低下を使用しても良い。
3) FDPの代替としてD-ダイマーを使用して良い。各施設の測定キットにより以下の換算表を使用する。


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