留学体験記

毛利元信

2007年4月~2008年9月 Royal College of Surgeons in Ireland

 1年半の留学を終えてすでに約5年が経過し、今となっては遠い思い出になりつつあります。短い期間でしたが、今までの人生で経験したことのない貴重な体験をさせていただき、滝先生(当時の教授)をはじめ留学先で御指導いただいたDavidにはとて も感謝しております。
今回、留学生活を振り返る機会を与えてくださりましたので、自分なりに感じたことを書かせていただきます。
私はとにかく留学をしたいと以前より思っておりました。
大学院に入る際にもぜひ留学をしたいという希望を出しておりましたが、実際に留学が決まった時は夢のようで鳥肌が立ったことを覚えています。そして4月15日出発の日を迎え、いよいよこの日が来たと意気揚々と関西国際空港に行きましたが、飛行機が大幅に遅れたため、結局その日は出発することができず、愕然としました。このまま日本を出ることすら出来ないのかと思うほど運が悪かったです。もちろん翌日には無事出発することができました。
向こうに着いて実際に目の当たりにしたことは、やはり言葉の問題でした。着いて間もなく、前任者のleaving partyに参加させてもらい、当然ですが常に英語が飛び交う状況に身を置いたときに海外に来たんだと、実感しました。当然その時は一言、二言のみで全く会話になりませんでした。ただ研究グループの方々は一生懸命に私の言おうと思っていることに耳を傾けてくれるし、とても親切にしていただきました。英語に関しては、途中からとうとう見かねたのか、David groupの一人が週一回の英語スクールをしてくれました。(勿論強制でしたが。)そのおかげもあってか少しずつでも聞き取りはできるようになってきましたが、話す方は最後まで難しかったです。ただアイルランドでの生活は電気を家に引いたり、銀行口座、immigrationの登録等を済ませたりするのには苦労し、自分がいかに無力であることを痛感させられました。

 実験はというと、前任者からの仕事を引き継ぐ形で、基本的には痙攣モデルを作成することでした。実験自体はスムーズに進めることができましたが、安定したモデル作りが出来、軌道に乗るまでには5ヶ月ぐらいかかりました。
ただ、ようやく慣れてきた頃、実験室が年内で移動することになりました。こちらの雰囲気からして引越しがすんなり進み、新しい実験室で円滑に再開できるとは到底思いませんでしたが、その不安は見事に適中しました。
荷物の移動、滅菌、セッティング゙を順に行うだけでなぜか2週間ほどかかり、ようやく実験を開始できるようになっても酸素が突然でなくなるなどのトラブルが相次ぎ、実際以前のように戻るのに1ヶ月ほどかかりました。ただ留学当初と異なりそのような状況になっても、「まあ仕方ないな」と思えるようにもなっていました。

アイルランドでもう一つ印象に残っておることは、ハーフマラソンに参加し無事完走できたことです。日本にいる頃から、少しマラソンを始めていましたが、留学中本格的にマラソンを開始しました。そして同じグループ゚のマラソンを趣味にしているドイツ人にダブリンハーフマラソンに参加させられました。ダブリンにある大きな公園を走りましたが、本来きれいな公園ですが、それを堪能する余裕はありませんでした。ただ完走できたときは何ともいえない達成感と充実感を味わうことができ、病み付きになりました。日本に帰ってきてからもマラソンは続けていますが、それ以降大会に参加したことはなく、近いうちにとは常に思っています。

 取り留めの無いことを思いつくままに書いてしまいましたが、冒頭でも書かせていただきましたが、本当に楽しかった1年半でした。いろいろな国にも遊びに行き、実際にいろいろなものを自分の目で見てまわることで感銘を受けました。人生観が変わるなどと大袈裟に言うつもりはありませんが、ものの見方というか見聞が広がり少しは自分の糧となったと思います。是非またアイルランドに遊びに行きたいと思っています。

 これから医師になり、留学をと思っている方は是非行かれることをお勧めします。アメリカ方面が多いでしょうが、どこでも 行ってみる、住んでみる、そして自分で経験することがとても大切だと思います。

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