留学体験記

鈴木秀謙

2007年12月~2009年10月 Loma Linda College

着いたばかりの頃、ロマリンダ大学で通りすがりの人に撮ってもらった写真。残念ながら目をつむっています。

 アメリカ合衆国カリフォルニア州ロマリンダ市のロマリンダ(Loma Linda)大学脳神経外科に2年間留学し、くも膜下出血後の脳損傷や脳血管攣縮について研究をしました。ロマリンダ市はロスアンゼルスの中心から東に約100km、車で約1時間のところにある小さな大学町です。1年を通じて南カリフォルニア特有の暖かな、乾燥した日が多く、雨は殆ど降りません。町中は緑で美しく、色とりどりの花がみられますが、スプリンクラーによる放水で維持されています。病院町、教会町ということもあり、穏やかな比較的裕福な人が住んでいました。治安も良好で、殺人事件が年間1件あるかないかで、白人比率が約80%と高く、平均収入や寿命は全米でトップ5に入るという話でした(確認はしていません)。また、ラスベガスやディズニーランドなどの遊園地に車で1~2時間で行けるという場所でもありました。

 ロマリンダ大学はSeventh Day Adventist(SDA)というキリスト新教の一派が経営しており、肉食禁止、アルコール禁止、離婚禁止、週末の労働禁止でした。従って、ロマリンダ市そのものには肉やアルコールが売っていませんでした。その代わり、ロマリンダ市で「ロマリンダ大学で働いている」と口で言うと、IDなど何も見せなくても、ヒルトンホテルやレンタカーなどの割引を受けることが出来ました。もっとも、車で10分ぐらい走ると、隣町のスーパーがあり、そこでは肉もアルコールも何でも売っており、日本食にこだわらなければ、物価も安かったです。私は1本1ドルのワインや、1本1ドルのホットドックを好んで飲んだり食べたりしていました。
人々も親しみやすく、ホームパーティーに呼んでもらったり、バーベキューをよくしました。また、夏になると公園で無料の映画上映があったり、あちこちの町でフェスティバルや花火大会があったりと、無料で楽しめるイベントが沢山ありました。

クリスマスに飾り付けをした他人の家。
どこどこの家が奇麗とか、噂が出回り、結構遠方まで多くの人が見に行きます。

ロマリンダ大学での最後の日。その日にラボにいた人、全員に集まってもらい写真を撮りました。一番左が私、その隣がボスのJohn H. Zhang教授。私が手に持っているのはボスがサプライズで記念にくれたロマリンダ大学のロゴ入りの時計です。

 研究室はボスが中国系アメリカ人でした。留学生や研究者の出身国はアメリカ、中国、日本、ネパール、ロシア、ポーランド、イギリス、フランス等でした。それぞれお国柄があり、価値観も違い、カルシャーショックを受けました。習慣の違いによりイライラさせられたり、トラブルになりかけたこともありましたが、それも含めて今となっては良い思い出です。一番驚いたのは、金曜日の日没から土曜日1日がSDAの安息日で、労働禁止で、守衛に研究をしているのを見つかると、叱られ、強制的に実験を中止し家に帰されたことでした。守衛がSDAの信者でなければ大目に見てくれましたが、信者なら神様に背くことをしている訳ですから、どんな理由を言っても全く聞く耳を持ってくれませんでした。そのため、外部に光が漏れない様に細心の注意を払って研究をしていたのを昨日の様に思い出します。

 私としては折角、アメリカまで研究留学した訳ですから、あまり遊びに行かず一生懸命、研究をしていたつもりだったのですが、今、当時の写真を見てみますと、グランドキャニオンなどの多数の国立公園巡りをしたり、ルート66を車で巡ったり、野球を見たり、と結構楽しんでいました。人の記憶とはいい加減なものです。
ちょうどWBCがドジャーズスタジアムで開催され、日本対アメリカ戦を見に行き、応援合戦で盛り上がったのも良い思い出です。チャンスがあれば、ぜひ留学し、異文化を経験することをお勧めします。
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