Department of Oral and Maxillofacial Surgery
Mie University Graduate School of Medicine

教授挨拶

教授 新井直也

口腔・顎顔面外科学 教授
新井直也

三重大学の口腔・顎顔面外科学分野(旧・口腔外科学講座)は1953(昭和28)年に開講され、2023(令和5)年に開講70周年を迎えました。

【地域の方々へ】

当科では、くちという器官に生じる様々な疾患を対象としています。口という器官は、①内側の「口腔」の部分、②外側の「顔」の部分、そして③その間にある「顎」の部分から成っています。そこには、食べる、話す、唾液を出す、味や歯ごたえを感じる、表情をつくる、などの大切な働きがあります。当科では、親知らずの炎症から、顎骨内にできる病変、怪我や骨折、先天的な異常や発育異常、唾液腺の疾患、顎関節の異常、口腔がんに至るまで、口腔・顎・顔の領域に生じる疾患の診療を行っています。
当科では、以下の3つを診療の柱に据えています。第一に、治療成績が安定し国内で広く受け入れられている標準治療の提供を心がけています。第二に、高次医療機関として顎顔面骨折や口腔がんなどにおいて先進医療を手がけています。第三に、県内各所の病院や地域の歯科医院と連携し横のつながりを密にしています。これらを診療の「鼎(かなえ)」として、県民の方々のニーズに応えられるよう努めています。
口腔外科の疾患についてもう少し詳しく知りたい方は、病院広報誌MEWS(ミューズ)に掲載の口腔外科特集をご覧ください。一般の方々向けにやさしく解説してあります。

  MEWS Vol.32【特集】口腔外科(2023年秋号)

【臨床研修医を希望する方々へ】

当科では治療成績が安定し国内で広く受け入れられている標準治療の実践を心がけています。同じ口腔外科疾患でも施設によって治療方針が異なることがあります。標準治療とは、いわば全国の多くの口腔外科が取り入れている“最大公約数”的な治療ということができます。
教育の観点から眺めると、標準治療の実践には次のような利点があります。まず、医局の先輩たちが治療方針を共有するため、研修医は迷いなく標準治療を学ぶことができます。次に、“最大公約数”的な治療を学ぶことで、全国の多くの口腔外科医と治療に対する考えを共有することができます。
ただし、です。標準治療は優先されるべき治療法ですが、効果が十分でないものや、標準治療自体が確立されていない疾患があります。ただ教わるだけではなく、日常臨床の中で自身が観察した結果に疑問や興味を持ち、解明したいという意欲が大切です。それが良い臨床医の条件の一つだと考えています。
三重大学の口腔外科の様子をもう少し知りたい方は、附属病院の広報誌MEWS(ミューズ)に掲載の「口腔外科特集」をご覧ください。

  MEWS Vol.32【特集】口腔外科(2023年秋号)

【口腔外科医を目指す方々へ】

臨床はよく、「サイエンス&アート」といわれます。
口腔外科医を目指して真摯に臨床を続けていれば、アート(技術わざ感性センス)を磨くチャンスは早晩訪れます。問題は、いつサイエンス(科学)の側に身を置くかです。こちらは人生の中で自ら主体的に選択しないとチャンスは訪れません。
昨今の日本では、研究して学位を取得するより、若くして専門医を目指す実学重視の傾向が強いと言われます。サイエンスを選択することで、アートの側にブランクができることを心配する気持ちがあるようです。けれども、臨床は「サイエンス&サイエンス」でも、「アート&アート」でも片手落ちです。
当科では、長い臨床家人生の一時期に、研究をして学位をとり、さらには海外に留学して研究してみたいという気概のある若者を応援しています。現在当科では、細胞内酵素であるフォスフォジエステラーゼの遺伝子変異と癌の浸潤との関連や、薬剤の副作用で起こる顎骨壊死のメカニズムなどをテーマに培養細胞やマウスを用いて研究を行っています。

【歯科衛生士やその学生の方々へ】

介護保険制度が発足した2000年(平成12年)頃から、専門的な口腔衛生管理が高齢者の誤嚥性肺炎を予防し、がん治療で生じる口腔粘膜炎を軽減することが知られるようになりました。口腔衛生管理のニーズの高まりとともに、その担い手として期待されたのが歯科衛生士です。
ご存知のとおり、歯科衛生士学校は2004年の法律改正により、それまで2年間だった教育年限が3年もしくは4年間に延長されました。三重県に3校ある歯科衛生学科でも、2011年からそろって3年制の卒業生を輩出しています。専門的口腔衛生管理に対する社会のニーズはますます高まり、2013年には三重大学附属病院に口腔ケアセンターが設置されました。
さて、歯科衛生士が専門性を発揮すれば高齢社会のニーズに応えられることはわかっていましたが、それを学ぶ教科書がありませんでした。私はその教科書づくりに長く関わってきたこともあり、高齢の有病者やがん患者に良質で効果的な口腔衛生を提供するには、歯科衛生士の方々の主体的・・・な活躍が不可欠であるとつくづく感じてきました。当科では、地域の歯科衛生士の方々やその学生の活躍を応援していますので、協力できることがありましたらいつでもご相談ください。

『はじめて学ぶ 歯科衛生士のための歯科介護』(医歯薬出版)

当院の歯科衛生士の活動の一部を附属病院の広報誌MEWS(ミューズ)「口腔外科特集」で紹介しています。ご興味のある方は下記をご覧ください。

  MEWS Vol.32【特集】口腔外科(2023年秋号)

【学術集会に関心のある歯科関係の方々へ】

大学の歯学部もしくは歯科大学がある都道府県では、その大学が地域の歯科・口腔外科で中核的な役割を果たします。東海3県の中では愛知県と岐阜県には大学の歯学部がありますが、三重県にはありません。そのため、三重大学の口腔外科は、口腔外科だけでなく広く歯科医療や歯科医学、歯学教育の拠点としての役割を担ってきました。新しい活動の一つに、地域歯科医療関係者による学術集会『ウインターデンタルミーティング in 津』があります。ご興味がおありの方は、下記のホームページをご覧ください。

  Winter Dental Meeting in Tsu

三重大学の口腔外科は、これからも歯科ならびに口腔外科の臨床・教育・研究の拠点として地域に貢献できるよう努めてまいります。

所属学会

日本口腔外科学会(代議員・指導医)
日本口腔科学会(評議員、指導医)
日本口腔顎顔面外傷学会(理事、評議員)
日本顎変形症学会(評議員)
日本口腔組織培養学会(理事、評議員)
日本歯科薬物療法学会(評議員)
IBCSOMS (Fellow:国際口腔顎顔面外科専門医)
その他

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