本文へスキップ

三重がん・生殖医療ネットワーク

TEL. 059-232-1111

〒514-8507 三重県津市江戸橋2-174

妊孕性温存療法とは?CONCEPT

 近年、がん治療成績の向上に伴い、がんを克服した「がんサバイバー」の方が増えています。しかし、抗がん剤や放射線治療の影響で、精巣や卵巣機能が低下し、将来の妊娠が望めなくなる方も増加しています。一度失ってしまった妊孕性(妊娠する力)は二度と回復しないため、がん治療開始前に妊孕性を温存しておく必要があります。具体的には、男性の方には「精子凍結」、女性の方には「卵子凍結・胚凍結・卵巣凍結」といった方法があります。具体的には、以下のように行っていきます。

   

男性の妊孕性温存療法

◆精子凍結

 抗がん剤や放射線治療は、精巣組織への影響が強いため、妊孕性温存を希望されるのであれば、治療開始前の精子凍結が必要です。精子は、精巣内で常に作られ続けているため、抗がん剤投与後では精子が死滅していたり、抗がん剤による精子のDNA損傷の可能性が否定できません。実際に、抗がん剤投与前と後の精子を使用した妊娠率を比較した場合、妊娠率に大きな違いがあります。そのため、可能な限り抗がん剤開始前の精子凍結をお勧めします。
 具体的な凍結の方法は、採取した精子を遠心分離にかけて運動率の高い精子を厳選し、凍結保存液を添加後に、液体窒素中で凍結します。液体窒素のタンクの中で長期保存をしておき、必要な時に融解して使用します。

女性の妊孕性温存療法

 女性の場合は、妊孕性温存方法は3種類あります。がん治療までに時間的猶予がない場合や初経開始前であれば、卵巣凍結しか方法はありませんが、初経開始後で時間的猶予があれば、卵子・胚凍結が可能です。結婚されている方であれば、受精させた胚の状態での凍結も可能ですが、未婚の方であれば卵子凍結になります。
 具体的には、乳がんなどの固形腫瘍で、手術から抗がん剤治療まで1カ月程度の期間がある場合は、卵子凍結や胚凍結の選択が可能ですが、白血病やリンパ腫などの血液腫瘍の場合は、診断後出来るだけ早期に抗がん剤治療を始めなければならない場合は、卵巣凍結しか方法はありません。また、固形腫瘍でも進行が早く、手術前に抗がん剤治療が必要な場合も、卵巣凍結の選択肢が挙げられます。

◆卵子凍結

 排卵誘発剤の注射や飲み薬で卵巣の卵を多く発育させ、卵子を成熟させる注射を行った後に採卵していきます。採卵の時点で成熟している卵子を凍結保存します。卵子の状態で凍結すると、将来使用するときには、融解し精子と受精させ、培養して胚の状態で移植をし、妊娠を目指します。それだけの過程を経なければならないので、卵子1個あたりの妊娠率は8〜12%程度といわれており、決して高いとは言えません。そのため、将来の妊娠を目指すには十分な数の卵子を保存しておく必要があります。卵巣刺激に通常は10日間ほど必要になるため、ある程度時間的に猶予がある患者様に限られます。

◆胚凍結

 卵巣刺激後に採卵した卵子を配偶者の精子と受精させ、培養して胚の状態で凍結を行う方法です。受精した後の胚の方が、卵子凍結よりも凍結のストレスに強く、融解時の回復率は95%程度です(卵子凍結の場合は約80%)。そのため、配偶者がいる場合は、胚凍結の方が将来の妊娠の確率は上がりますが、将来配偶者が代わった場合や死別した場合は、保存した胚が使用出来なくなるため、配偶者がいる場合でも半分胚凍結、半分卵子凍結という形で分ける選択肢もあります。卵子凍結と同様に、10日間以上の時間的猶予が必要となります。
 

◆卵巣凍結

 手術日程が決まれば早急に行えるため、抗がん剤開始前に数日間の猶予があれば実施できます。
 方法は、腹腔鏡や開腹手術で片側の卵巣を摘出します。通常卵巣に保存されている卵子は卵巣の表層に大胡あるため、その部分を薄く処理し、凍結液に浸けた後、液体窒素中で凍結を行います。時間的猶予が短くても早急に実施でき、多くの卵子を保存できるメリットはありますが、卵巣にがん細胞の混入があれば、将来使用できなくなるため、適応は慎重に判断しなければなりません。
 凍結した卵巣を使用する場合は、卵巣組織を融解し、腹腔鏡手術などで残しておいた卵巣に埋め込むか、血流の豊富な部分の腹膜へ埋め込み、卵巣を生着するのを待ちます。残った卵巣へ埋め込んだ場合は、その後の自然妊娠も期待できます。 


バナースペース

三重がん・生殖医療ネットワーク

〒514-8507
三重県津市江戸橋2-174

TEL 059-232-1111