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従来の手術は、皮膚を大きく切開し臓器を外部に露出させて行う開放手術が主流でしたので、手術後の痛みも強く、体の回復も遅くなっていました。また、美容上からも、大きな傷は目立ちました。腹腔鏡下手術とは、腹壁を大きく切開せずに、1cm程度の小孔を腹部に数カ所作り、術者の手の代わりに鉗子(かんし)や超音波駆動メスなどの柄の長い手術器具を使って、同様に小孔から挿入した腹腔鏡と呼ばれるカメラのビデオモニターを見ながら行う手術です。術者の視野と作業空間を確保するために、腹部の胃や腸が入っているスペースである腹腔内や、その後ろの腎臓や副腎などが入っている後腹膜腔に炭酸ガスを注入してふくらませます。腹腔鏡下手術は、1980年代後半に欧米で腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われてから普及してきており、泌尿器科領域においても、副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘出術、腎がんや萎縮腎などに対する腹腔鏡下腎摘出術、前立腺がんに対する腹腔鏡下前立腺摘出術などが保険適応となっています。
従来の開腹手術に比べて腹腔鏡下手術は、おなかを切る傷が小さく、筋肉や神経の損傷も少ないために、手術後の傷の痛みが軽く、鎮痛剤の使用頻度も随分と減りました。また、腹腔鏡下手術では、手術中に胃や腸が直接空気に触れる時間が非常に短いので、手術後早期に腸の動きが回復するため、早くから食事を開始することができ、早期の退院が可能となり、仕事への復帰も早くなっています。
昨今、腹腔鏡下手術と紛らわしい名前ですが、皮膚を小さく切開して行う開放手術の腹腔鏡下小切開手術(ミニマム創手術)という術式が保険適応となり、徐々に普及してきています。当科では幸いなことに現時点、腹腔鏡下手術の重篤な合併症は起こしていませんので、侵襲性という点から言っても、また、手術の経験数という点から言っても、両者を比較した成績はあまり変わらないと思っています。当科では患者さんにすべての治療法を提示させていただいていますが、他施設の腹腔鏡下手術の医療事故が時々報道されているせいでしょうか、最近は以前より、患者さんが開放手術の方の腹腔鏡下小切開手術を選ばれるケースも増えてきたようには感じています。

ビデオモニターを見ながら、腎がんに対する腹腔鏡下腎摘出術を行っているところです。