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当科における教育・研究


基礎実験プロジェクト#1
前立腺の形態発生に対するビスフェノールAの影響

私たちは、内分泌かく乱化学物質による健康への影響を検討しています

近年、ごく微量で動物の内分泌機能に悪影響を与える内分泌かく乱物質(環境ホルモン)が大きな問題となっています。この中で、天然の女性ホルモンであるエストラジオールと化学構造が似ていて、女性ホルモン様作用を示す化学物質を女性ホルモン様物質と呼びます。
私たちの研究グループでは、合成女性ホルモンであるジエチルスチルベストロールを陽性対照として、私たちが日常的に接するものに含まれる合成化学物質、ビスフェノールAが生体、特に前立腺の発生、成長に及ぼす影響を検討しています。

基礎実験プロジェクト#2
前立腺肥大症の組織構築と薬剤感受性の関係

私たちは、患者さん一人ひとりに合った治療法を選択するオーダーメード医療に向けた取り組みを実施しています

現在、前立腺肥大症の第一選択薬としてα1受容体阻害薬が治療に使われています。しかし、服用を始めてすぐは効果が表れるものの、次第に薬の効きが弱くなる、もしくは薬が効かなくなり、外科的な手術を希望されるケースが多々あります。その原因として身体が薬に慣れてしまうことも考えられますが、それにも増して肥大症の症状を来す「前立腺の組織構築」が関係していると、私たちは推察しています。
そこで私たちの研究グループでは、外科的手術より得られる組織検体を病理組織学的に解析し、患者さん一人ひとりの組織構築の特徴と、服用しているα1受容体阻害薬の種類が関係しているか否かを検討しています。また、複数あるα1受容体阻害薬の特異的な作用を比較するために、組織検体を免疫不全マウスに移植した後、薬剤を経口投与し、病理組織学的な変化を調べています。

基礎実験プロジェクト#3
前立腺肥大症の薬による前立腺がん細胞の増殖抑制メカニズム

私たちは、患者さん一人ひとりに合った治療法を選択するオーダーメード医療に向けた取り組みを実施しています

前立腺がんには臨床的に問題とならない潜伏がんというものがあります。潜伏がんは臨床症状を呈しないために大きな問題とはなりませんが、何らかのキッカケで臨床がんへと悪性・進展します。古くから日本人には潜伏がんが多く、臨床がんが少ないと言われてきましたが、食生活の欧米化からか、現代では前立腺がんの罹患率(臨床がんの発見)が上昇しています。
私たちの研究グループは、前立腺肥大症の第一選択薬、α1受容体阻害薬が基礎研究で用いる前立腺がん細胞株の増殖を抑制することを見出しました。前立腺肥大症患者さんの多くが服用しているα1受容体阻害薬にがん抑制効果があれば、潜伏がんから臨床がんへの悪性・進展を低下させることが期待されます。今後、基礎研究の結果を元に、臨床データの解析を進めていく予定です。

基礎実験プロジェクト#4
がんの微小環境から考える再燃前立腺がんの増殖抑制

私たちは、患者さん一人ひとりに合った治療法を選択するオーダーメード医療に向けた取り組みを実施しています

前立腺がんの治療において、初期のがんはホルモン療法に有効性を示すものの、次第にホルモン抵抗性を有する、もしくはホルモン抵抗性を獲得したがん細胞が増殖し、再燃がんとなります。現在でも再燃がんに効果的な治療法は乏しく、がんの転移を含め、臨床的に大きな問題となっています。
現在、私たちの研究グループでは、再燃がんをin vivoの実験モデルで再現し、ホルモン抵抗性前立腺がんの増殖を抑制する新たなストラテジー(戦略)を探りつつあります。最新の研究結果では、ホルモン抵抗性がん細胞の増殖にはがん周囲にある間質細胞からの刺激が重要であることを解明し、それらの働きを阻害することがホルモン抵抗性がん細胞の増殖抑制に働くことを明らかにしています。

基礎実験プロジェクト#5
前立腺がん幹細胞ニッチ形成機構の解明

私たちは、再燃前立腺がんの根治に向けた基礎研究を進めています

現在、前立腺がんが再発する機序として、がん幹細胞仮説が注目されています。がん幹細胞は、身体の様々な組織や臓器を構成する細胞の元となる幹細胞と同様の性質を有しており、治療によって大部分のがん細胞を除いたとしても、ごく僅かながん幹細胞が生き残っていればがんの再発が起こりうると考えられます。
私たちの研究グループでは、治療後にもがん幹細胞が生き残れる環境因子として、がん周囲の間質細胞(がん間質)の存在を考えています。がん間質は、増殖因子やサイトカインを産生・分泌することによりがん細胞の増殖を刺激し、腫瘍を成長させます。そこで、がん間質―がん幹細胞の相互作用を標的とした再燃前立腺がんに対する新規治療戦略の可能性や有用性を検証するために、がん間質モデルとなる細胞の作製に取り組んでいます。

基礎実験プロジェクト#6
前立腺増殖性疾患に対する間質標的治療法の確立を目指して

私たちは、前立腺が病気にならない条件を探っています

前立腺肥大症(良性)や前立腺がん(悪性)といった増殖性病変は、年齢依存的に高頻度に発生し、高齢男性の生命を脅かしたり、生活の質を著しく低下させます。両疾患の発生には、加齢に伴う体内アンドロゲン濃度の低下が示唆されているものの、明確な理由は分かっていないのが現状です。
現在、私たちの研究グループでは、前立腺の病気を「組織構築の変化」という視点から観察し、病気になった前立腺には、正常前立腺に豊富に存在する平滑筋細胞が失われていることに注目しています。まず、基礎実験レベルで人為的に平滑筋細胞を作り出すことを目標にしていますが、最終的には病気の発生が平滑筋細胞の消失に関係しているか否かを動物実験で検証していく予定です。

基礎実験プロジェクト#7
前立腺組織内ホルモン環境の変化による細胞増殖刺激

私たちは、前立腺が病気にならない条件を探っています

前立腺は男性ホルモン(アンドロゲン)の働きに依存した雄性副生殖腺ですが、女性ホルモン(エストロゲン)に対する受容体も発現していることから、その発生・分化・成長はアンドロゲンとエストロゲンの二重支配下にあると考えられています。
私たちの研究グループでは、胎生期にエストロゲン様化学物質に曝露した泌尿生殖洞(前立腺や膣の発生母地)では幾つかの細胞増殖因子が過剰に産生増加していることを見出しました。よって、前立腺の発生・分化の過程で体内ホルモンバランスに不均衡が生じると、前立腺の組織構築に多大な影響を及ぼす可能性が示唆されます。今後、マウス前立腺を1つのモデルに、ホルモンバランスと増殖刺激の関係について検討を進めていく予定です。