モーニングセミナー/Morning Seminar

小児の仙骨麻酔の達人になる!

東京女子医科大学 麻酔科学教室
上園晶一

Tips for Successful Caudal Block in Children

Shoichi Uezono, MD.
Department of Anesthesiology, Tokyo Women痴 Medical University



 仙骨麻酔を自由に扱えるようになると、未熟児から年長児までの手術の麻酔が楽しくなります。仙骨麻酔のおか げで、患者はもちろん、親や外科医、そして同僚の麻酔科医や看護師からも感謝されるからです。しかし、一方で、 重症の合併症を引き起こしてしまうと、仙骨麻酔を行おうという気持ちには二度となれないかもしれません。

このセミナーでは、小児患者の仙骨麻酔について、

(1) なぜ行うのか(利点と欠点)

(2) 誰に行うのか (適応と禁忌)

(3) どう行うのか (道具と手技)

(4) 何を使うのか (薬と用量)

(5) どう対処するのか (レスキューと合併症)

という問いかけに対し、私が、東京女子医科大学でおこなっている方法を紹介します。

 仙骨麻酔ひとつをとってみても、いろいろな考え方ややり方があるので、あくまでも、一個人(施設)のやり方 として、受講者の参考にしていただければ幸いです。

 仙骨麻酔を行う上で、私がもっともこころがけているのは、合併症を作らないということです。合併症を避ける ために以下のことに注意しています。

(1) 適応を誤らない

(2) 確実な手技を身に付ける

(3) 不慣れなあいだは、必ず指導医とともにおこなう

(4) テストドースで確認する

(5) 合併症の早期徴候を見逃さない

(6) 術後回診で合併症の有無をモニタする

 小児患者の場合、仙骨麻酔の手技は簡単で、慣れれば1-2分もあれば終了します。全身麻酔と併用する場合は、 “浅い”全身麻酔で維持することが可能になるので、手術終了後、全身麻酔からの覚醒が早く、仙骨麻酔にかかっ た数分の時間を取り戻すことは容易に出来ます。さらに、術後疼痛がコントロールされているため、回復室でも安 定していて、比較的にすぐ退室することが可能になります。麻酔時間という観点から見ると、仙骨麻酔は、“急が ばまわれ”を実践していることになります。

 仙骨麻酔は、小児麻酔のローテーション期間中にぜひともマスターすべき手技です。以下は、研修中の先生方が 早く確実に上達するための私からの助言です。

(1) 練習、練習、練習(数をこなす)

(2) 早めに計画する(予習してから臨む)

(3) 家族、外科医、指導医と相談する(最初の頃は時間がかかる)

(4) 準備を確実にする(手技、薬剤の確認を怠らない)

(5) ランドマークを理解する(仙骨麻酔が成功するかどうかの鍵)

(6) 合併症をおこさないように最大限の注意(重大な合併症は起こりうる)

(7) 深追いしない(数回試みて出来ない場合は次のプランに変更)

(8) 術後回診をかならずおこなう(仙骨麻酔の合併症のチェックだけでなく、患児や家族の満足度を知ることも大切)