動物実験を行う研究者は動物の命を尊重し、可能な限り動物を用いない方法を使用したり(代替法),実験に使用する動物数を減らす努力を続けています。
特に,毎年数百件の届出がある新規化合物の安全性評価において,これまでは動物実験が必要とされていた類似化合物の評価を,コンピューターシミュレーションや細胞での評価に置き換える取り組みが進んでいます。
それでもなお、現在の科学において動物実験がゼロにならない理由をご説明します。

1. 「細胞」と「体」は違います

細胞培養の技術は進歩しましたが、細胞はあくまで体の一部です。 私たちの体は、脳、臓器、血管、神経が複雑につながり合って動いています。 細胞単体では見えない、体全体としての反応(血圧の変化や神経への影響など)を確認するために、動物での実験が必要です。

2. 体の中の「複雑な変化」を知るために

薬が体に入ると、肝臓で分解されたり、腎臓から排出されたりと、様々な変化を受けます。 「薬が患部に届く前に分解されないか」「体の中で予期せぬ悪い物質に変わらないか」。 こうした体内の複雑なドラマは、コンピュータや試験管だけでは再現しきれません。

3. コンピュータは「未知のこと」を予測できません

AIやコンピュータは優秀ですが、「人間がすでに解明しているデータ」しか計算できません。 生命にはまだ多くの「未知の仕組み」があります。薬剤等の効果の検証においては,コンピュータが予測できない未知の副作用を見落とさないよう、実際の体での検証が不可欠です。

4. 安全を守るための「最後の砦」

人類の幸福のために最先端の研究を行うことが大学における研究者の使命です。
もし動物実験を省略すれば、新しい医療を初めて試すのは「人間」になってしまいます。 人々の安全を守るための最終確認として、現時点では動物実験を完全に置き換えることはできません。
私たちは命の重みを噛み締め、厳格なルールの下で必要最小限の実験を行っています。