疾患の治療
眼科領域の腫瘍
眼瞼の腫瘍
<疾患>
- 良性の腫瘍
- 黄色板症
壮年に多く、上まぶたの内側に左右対称にできます。平べったく、境がはっきりしています。 - 皮様嚢腫
上まぶた外側に多く、皮膚とは癒着しません。 - 血管腫
毛細血管腫と海綿血管腫があります。毛細血管腫・緑内障・てんかんを合併したものをスタージウェーバー症候群といいます。 - 神経線維腫
- 黄色板症
- 悪性腫瘍
- 基底細胞癌
まぶた原発で、色素沈着と潰瘍を伴います。 - 扁平上皮癌
まぶた原発で、角化と潰瘍を伴います。 - 瞼板腺癌
まぶたにある、脂を出す穴(マイボーム腺)を原発とします。高齢者で、再発を繰り返すものもらいと紛らわしいことがよくあります。 - 悪性黒色腫
血行転移しやすく、比較的まれな腫瘍です。
- 基底細胞癌
治療は、基本的には手術による切除です。しかし、術後のみばえの問題から、形成手術も要する場合が多々あります。この場合、顔や額の一部を切開し、傷を補填することがあります。
切除が困難な場合や、切除しきれない場合には放射線を用いた放射線療法や、腫瘍細胞を凍らせる冷凍凝固療法が選択されることがあります。
眼窩腫瘍
「眼窩」とは眼球が収まっている、窪みの部分です。ここに発生する腫瘍は比較的まれで、炎症による偽腫瘍が最も多いとされています。しかし、血管腫、リンパ腫、転移性の腫瘍なども認めることがあります。
症状としては腫瘍の圧排による眼球突出、眼球運動障害とそれに伴う複視(ものが二重に見える)、視神経障害による視野欠損・視力低下などがあります。
治療としてはステロイド投薬による腫瘍の縮小、放射線療法、外科的切除などがあります。
脈絡膜腫瘍
「脈絡膜」とは、眼の中の網膜という、カメラのフイルムにあたる部分の裏にある血管の豊富な組織です。
- 良性の腫瘍
- 脈絡膜血管腫
スタージウェーバー症候群に合併することが多く、眼底検査ではサーモンピンクの色調をした腫瘍を認めます。変化が黄斑という視力治療としては光凝固を行いますが、大きさが小さい場合には経過観察することもあります。 - 脈絡膜骨腫
脈絡膜に原発する骨腫です。眼底検査では不規則に隆起した黄白色の腫瘍を認めます。びまん性でまだら状の色素脱色と多数の小血管を認めます。有効な治療法はありません。
- 脈絡膜血管腫
- 悪性腫瘍
- 脈絡膜黒色腫
脈絡膜に発生する悪性腫瘍のなかでは最も頻度が高いとされています。眼底検査では黒褐色の実質性の腫瘍として認められます。生命予後は不良とされていますので、早期の治療が望まれます。治療としては光凝固、選択的眼動注療法などがありますが、眼球摘出にいたることもあります。 - 脈絡膜転移癌
男性では肺癌、女性では乳癌からの転移が多いとされています。眼底検査では乳白色の隆起がみられます。治療としては原発巣の治療に準じて行われます。
- 脈絡膜黒色腫
網膜芽細胞腫
乳幼児の眼腫瘍のなかで最も多く、網膜に発症します。小児悪性腫瘍の中でも多く、出生15000-20000人に1人で発症するといわれています。片眼性が66%、両眼性34%とされており、遺伝性も指摘されています。
眼が白く見える「白色瞳孔」で見つかることが多く、生後8ヶ月−2歳で見つかることが多いとされています。
転移による全身への影響が危惧されますので、早期の治療が必要です。治療としては眼球摘出を行うこともあります。放射線療法、レーザーを用いた光凝固療法、冷凍凝固療法、薬剤を用いた化学療法などがあります。治療が適切に行われれば生命予後はよいとされています。
リンパ腫
眼窩部に生じ、大きくなるとまぶたの腫れや眼瞼下垂・複視などを生じます。網膜・脈絡膜など眼内に生じることもあります。
結膜にみられた場合、サーモンピンクの柔らかな塊が認められることがあります。
まずは全身への影響(原発病変の検索)を考え、様々な全身検査を行います。
診断が確定しない場合、一部分だけ切除し(生検)、顕微鏡検査で診断を確定する事もあります。
治療としては化学療法、放射線療法などがあります。また、腫瘍容積の縮小を目的とした外科的切除を行うこともあります。
文責 杉本昌彦