肝移植について

肝移植は回復の見込みのない肝臓病により生命の危機に瀕している患者さんに対する根治的な治療法です。手術により病気の肝臓を取り出し、新たな肝臓を植えるという治療法です。肝移植の対象となる病気には以下のようなものがあります。
急性肝不全や非代償性肝硬変:急激に、あるいはゆっくりと進行性に肝機能が悪くなり、生命が脅かされる病気です。
胆道系疾患:肝臓では胆汁とよばれる消化液を合成し、肝臓内から肝臓外につながる胆管とよばれる管を通して腸管内に分泌しています。その胆管のいずれかの部分に障害があり、胆汁の分泌が妨げられる病気です。
先天性代謝性疾患:肝臓では解毒やタンパク質の合成なども行っています。遺伝子の異常から肝臓で作られる特定のタンパク質がうまく合成されず、それが原因で成長や体のバランスが保てなくなる病気です。
悪性腫瘍:肝細胞がんや肝芽腫などの肝臓の腫瘍です。

急性肝不全肝炎ウイルスや薬剤などによる急激な肝機能低下
非代償性肝硬変肝炎ウイルスやアルコールなどによる慢性的な肝不全
胆道系疾患胆道閉鎖症、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎
先天性代謝性疾患各種の先天性代謝性疾患 (小児)
悪性腫瘍肝細胞がん、肝芽腫など

肝移植の種類

肝移植には脳死肝移植と生体肝移植があります。それぞれメリット、デメリットがありますが、日本では脳死肝移植が圧倒的に少なく、多くは生体肝移植が行われています。
脳死肝移植の場合は準緊急手術となるものの、大きなサイズの肝臓が移植できるといったメリットがあります。
生体肝移植の場合は自らの意思で申し出られた方が生体ドナーとなり、ドナーの肝臓の一部を手術で切り取り、患者さん(レシピエント)に移植されます。通常、小児への肝移植の場合は肝外側区域 (肝臓全体の約2〜3割)、成人への肝移植の場合は肝右葉 (肝臓全体の約6〜7割)、もしくは左葉 (肝臓全体の約3〜4割)がグラフト肝として用いられます。
ドナー、レシピエントとも肝臓は手術後に再生しほぼ元どおりの大きさになるため、ドナーの方も術後の肝機能に問題はなく、術前と同様の日常生活をおくることができます。ただし、頻度は高くないものの生体ドナーの方にも術後合併症の可能性はあり、健康な方に手術という負担をかけなければならないことが生体肝移植においての最大のデメリットです。

肝移植の種類

生体肝移植脳死肝移植
メリット ・健康な肝臓を移植
・待機手術が可能
・大きな肝臓を移植
・血管再建が比較的容易
デメリット ・生体ドナーの危険性
・ドナーは親族に限定
・グラフト肝臓が小さい
・待機時間が長い
・ドナーが少ない
・緊急手術となる

肝移植の成績

2002年3月から肝移植を開始し、2023年12月までに165例の肝移植を行っています。そのうち生体肝移植は160例で、成人130例、小児30例に行っています。また5例の脳死肝移植(成人)を行っています。
対象疾患は、小児の41%は胆道閉鎖症であり、成人は肝細胞がん36%、非代償性肝硬変32%、胆汁うっ滞性疾患20%、急性肝不全11%の順です。当科の治療成績は、全症165例の1年生存率は81.7%で、5年生存率は67.1%です。これを18歳未満の小児30例と18歳以上の成人135例でわけますと、小児例は5年生存率85.8%で、成人例では1年生存率76.5%、3年生存率69.7%、5年生存率64.1%になります。

肝移植後の生存率

三重大学 肝胆膵・移植外科 / 2002.3〜2023.12 / 165例 (生体肝移植:160例・脳死肝移植:5例)

脳死肝移植・生体肝移植の生存率
小児の肝移植・

臓器移植センターへのお問い合わせ

レシピエント移植コーディネーター:浦和愛子
電話:059-231-5812 FAX:059-231-5541
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HP:三重大学医学部附属病院 臓器移植センター