• 三重大学医学部附属病院 感染対策チーム

    感染症予防法で、医師からの届出対象となる感染症のリストと届け出基準

    4類感染症で全例報告のもの
    炭疽


    《 定 義 》

    本症は炭疽菌(Bacillus anthracis)によるヒトと動物の感染症で、温血動物、主にウシなどの草食獣に急性敗血症死を起こす。

    《 臨 床 的 特 徴 》

    ヒト炭疽には4つの主要な病型がある。国内の動物の発生はほとんどがウシで、感染の機会は農業従事者、獣医師、動物産品処理従事者などに多い。
    1. 皮膚炭疽
      全体の95〜98%を占める。潜伏期は1〜7日である。初期病変はニキビや 虫さされ様で、かゆみを伴うことがある。初期病変周囲には水疱が形成され、次第に典型的な黒色の痂皮となる。およそ80%の患者では痂皮の形成後7〜10日で治癒するが、20%では感染はリンパ節および血液へと進展し、敗血症へと進展し致死的である。
    2. 肺炭疽
      上部気道の感染で始まる初期段階はインフルエンザ等のウイルス性呼吸器感染や軽度の気管支肺炎に酷似しており、軽度の発熱、倦怠感、筋肉痛等を訴える。 数日して第2の段階へ移行すると突然呼吸困難、発汗およびチアノーゼを呈する。この段階に達すると通常、24時間以内に死亡する。
    3. 腸炭疽
      本症で死亡した動物の肉を摂食した後2〜5日で発症する。腸病変部は回腸下部および盲腸に多い。初期症状として悪心、嘔吐、食欲不振、発熱があり、次いで腹痛、吐血をあらわし、血液性の下痢を呈する場合もある。毒血症へと移行すると、ショック、チアノーゼを呈し死亡する。腸炭疽の死亡率は25〜50%とされる。
    4. 髄膜炭疽
      皮膚炭疽の約5%、肺炭疽の2/3に引き続いて起こるが、稀に初感染の髄膜炭疽もある。髄膜炭疽は治療を行っても、発症後2〜4日で100%が死亡する。

    《 報告のための基準 》

    診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断がなされたもの
    • 病原体の検出
      例 病巣組織や血液からの菌の分離・同定(鏡検・培養)と、分離した菌のガンマファージテスト、パールテスト、アスコリーテストによる確認など

    《届出について》

    届出の対象 患者
    届出の時期 7日以内
    届出事項 氏名・性別・病名・症状・診断方法・初診年月日・診断年月日・推定感染年月日・感染原因・感染経路・感染地域

    《備 考》

    なし

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