循環器・腎臓内科学
循環器・腎臓内科学では、9つの研究グループがお互いに協力しながら研究を行っています。 循環器領域は、分子細胞生物学、高血圧・心血管リスク研究、肺循環・静脈血栓塞栓症、心不全・心機能、画像診断、不整脈、心筋虚血・末梢動脈疾患の7つの研究分野、腎臓領域は、遺伝性腎疾患治療開発、臨床研究の2つの研究分野に分かれ、最新の生化学的手法やiPS細胞作製技術を用いた基礎的なものから、関連病院と協力した臨床研究まで多岐にわたり、世界トップレベルの研究を行っています。
循環器内科領域の基礎研究
循環器内科領域の基礎研究としては、分子細胞生物学グループがRho-キナーゼを中心とした平滑筋のシグナル伝達経路の解明を行ってきました。現在は、心筋のカルシウム感受性、心肥大および心臓の線維化におけるRho-キナーゼ・シグナルについて、遺伝子改変マウスなどを用いて研究し、将来の臨床応用を目指して取り組んでいます。また、疾患特異的iPS細胞の作製と心血管細胞への分化誘導による新しい治療標的の探索を行っています。
高血圧・心血管リスク研究グループ
高血圧・心血管リスク研究グループでは、心臓・血管疾患の発生や進展と、高血圧ならびに脂質異常・耐糖能障害などのリスク因子の関わりを解明し、その制御方法を探索することを目的に研究を行っています。最近では、高血圧と心腎機能との関連や冠動脈疾患の進展・退縮と危険因子との関連の解明をめざして、他の研究グループや関連病院とも協力した多施設共同薬剤介入試験などを進めております。
肺循環・静脈血栓塞栓症グループ
肺循環・静脈血栓塞栓症グループにおける肺塞栓症の診療・研究の歴史は古く、既に30年以上にわたって続けています。現在、肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症に対しては、疫学的調査、新しい診断方法の確立、新しい治療法の開発(各種カテーテル治療、下大静脈フィルター、新規薬剤、など)について臨床研究を進めております。また、肺高血圧症に対しては、早期診断法の確立、肺動脈性肺高血圧症に対する新規薬剤を組み合わせて用いる積極的治療法についての検討、末梢型慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈バルーン拡張術についての検討、動物モデルを用いた新規治療法の開発などを行っております。「肺高血圧症治療ガイドライン」(日本循環器学会、他7学会の共同作成)、「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症に関する診断・治療・予防ガイドライン」(日本循環器学会、他6学会の共同作成)、「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」(肺塞栓症研究会、他9学会の共同作成)の作成に参画してまいりました。
心不全・心機能グループ
心不全・心機能グループでは、1998年からコンダクタンスカテーテルによる経時的な左室圧-容積関係の計測を用いて、300例を越える心不全患者の心血行動態の測定を行い、診断、病態把握、治療方針、治療効果判定に役立てています。一方で、心機能及び血行動態評価において、心エコーの果たす役割は年々増えてきています。当グループでは両室ペーシングによる心臓再同期療法を積極的に行っていますが、両室ペーシングの治療効果予測や治療効果判定のみならず、両室ペーシングによる心拍数増加時の左室機能応答の改善についても、カテーテルによる心機能評価と比較しながら詳細な心エコー評価を行っています。また、イヌ心筋梗塞モデルを用いて、右室リモデリング進展様式を解明し、両心不全の抑制に繋がる治療を模索しております。
循環器領域
循環器領域において、心臓MRIは心筋虚血の有無、心筋Viability(心筋生存性)、精密心機能を診るための中心的な検査のひとつとして日常臨床において施行されています。これまで三重大学附属病院では1800件を超える心臓MRIを施行しており世界的にも有数の施設となっています。画像診断グループでは、放射線科と連携し心筋血流量の定量化の確立、肥大型心筋症、拡張期心不全の心筋血流量を定量解析し病態解明に努めています。
不整脈グループ
不整脈グループでは、頻脈性不整脈に対する心臓電気生理学的検査、カテーテルアブレーションを中心に、徐脈性不整脈に対するペースメーカー移植術、致死的心室性不整脈に対する埋込型除細動器移植術などの不整脈疾患に対する診療を行なっています。持続性・永続性心房細動に対する根治療法の開発、抗不整脈薬とカテーテルアブレーションの併用療法による洞調律維持効果や心房リモデリング改善効果について臨床研究を行っています。また心房細動の原因として近年重要視されている正常高値血圧に対して、早期介入による血圧管理の方法と心房細動のリスクについて臨床研究を進めております。
心筋虚血・末梢動脈疾患グループ
心筋虚血・末梢動脈疾患グループでは、血管内超音波検査(IVUS)や光干渉断層検査(OCT)による画像診断と冠血流予備量比(FFR)測定による機能診断の結果をもとに、患者背景や病変に応じた治療戦略を選択しています。また、DES留置後のステント血栓症や抗血小板療法の研究にも力を入れており、DES時代における至適な抗血小板療法の検討とともに長期予後を目指した薬物療法の介入にも積極的に取り組んでいます。現在、PCIとともに末梢動脈疾患(PAD)に対する血管内治療(EVT)も積極的に行っています。
腎疾内科の臨床研究
腎臓内科領域の基礎研究としては、遺伝性腎疾患治療開発グループがアルポート症候群をはじめとする遺伝性腎疾患の治療方法の開発を目指しています。アルポート症候群のモデル動物であるCOL4A3ノックアウトマウスを用いた研究を行うことにより、最終的には、細胞治療・遺伝子治療の開発を目指しています。
腎疾内科の臨床研究としては、腎生検および腎病理に基づく臨床データの蓄積を行い、そこから疫学的な手法を用いた研究を行っています。IgA腎症における予後規定因子の探索、肝炎に関連した腎炎の特徴など疾患に関連するものから、腎生検に関連した合併症の調査、腎生検後の安静時間の研究や腎生検針の太さの研究など患者さん視点に基づいた研究なども行っています。また、三重県内透析施設と共同して透析患者さんでの腎性貧血や骨ミネラル代謝異常(mineral and bone disorder:MBD)、心臓弁膜症に関する臨床研究も進めています。
各研究グループ
各研究グループでは、指導医がその研究背景、仮説、実験・研究手技から結果の解析、考察を指導し,日本の主要学会ならびに国際学会で発表したうえで、国際一流ジャーナルに掲載されるまで一貫した指導を行っています。 我々の研究に興味を持たれた方は、お気軽にお問い合わせ下さい。