研究留学/United States 藤本 直紀
'海外留学'という言葉を聞いて何をイメージされるでしょうか。'海外留学'は臨床医としての研鑽を積む'臨床留学'と'研究留学'に分かれます。私は循環器医としての数年間の勤務後、大学院に入学。学位取得後、2009年4月より研究留学を米国テキサス州で開始しました。
心不全診療が専門であったこともあり、留学希望先のボスに、'加齢が心臓・血管に与える影響'や'心不全患者での運動療法'についての研究に興味があるので雇ってほしい、というメールしたことが留学への第一歩でした。"大学院時代に学んでいる内容に関連があるので、受け入れても良い。ただし、アメリカ循環器学会(AHA)の研究助成金に日本から応募すること"との返事を頂き留学が決定しました。臨床業務の傍ら、英語の研究計画を完成させるのに2カ月かかり、締め切り直前にはボスと頻回のやり取りを経て、無事応募できました。後に助成金は獲得できましたが、留学前から自分をボスに分かってもらえ、また、自らもラボやボスの事を理解できたという事にも大きな意味があったと思います。
渡米直後、英会話は一筋縄にはいかず、アパート契約はできたものの、電話での対応が必要な水道・電気の契約時には周りの助けを必要としました。当初は電話対応も極力避けていましたが、今では少し会話力がアップしたのか、あまり気にならなくなっています。ただ、被検者の方からは'えっ、何て言ったの?''正しい発音はこうだよ'と指摘されることもよくあります。
研究面では、'middle-ageで心臓は硬くなり始める''高齢になってから運動しても若い心臓を取り戻すことはできない'の学会発表の機会を得ました。これらを医学論文としてまとめるあげる事も大切な仕事で、私の場合、自分でまず原稿を書き上げそれをnativeの同僚にチェックしてもらう。その後、ボスに内容を吟味してもらいOKがでれば投稿するという手順を踏んでいます。論文掲載された際は、仲間とともに喜びを分かち合うことができました。
仕事以外では、同僚や様々な職種の日本人の方とテニスやバスケットをし、語りあう機会もあります。テキサスはプロスポーツが充実しており、週末にはテキサスレンジジャーズの試合を観戦することもできます。ドライブ旅行で広大なアメリカの大自然を感じる旅にも出かけたことも良い思い出となっています。
楽しい事ばかりではありませんが、異なる環境で働くことによって得られる事も多く、後の人生において大きな財産になると思います。循環器・腎臓内科学は私達のような海外留学者を積極的にサポートしてくれます。
ハーバード大学/United States 岡本 隆二
地方大学でチャンスが多いのは、皆様ご存じでしょうか?
私は三重大学を卒業し、三重県で12年間臨床と大学院を経験した後、2006~2009年の3年間、アメリカ合衆国ボストンのハーバード大学に留学しました。
循環器の分子生物学を専門としていたので、疾患モデル動物の心臓肥大と動脈硬化の研究を主に行いました。
周りには米国国内はもとより、カナダ、ドイツ、イタリア、フランス、韓国、中国、インドなど世界中の大学からきた強者がいて、お互いとても刺激的な日々を送れたと思います。
そして日本から来ている他の先生とも色々な話が出来て、海外にいるからこそ親しく語り合えることが多くありました。
家族と海外生活をすることも貴重な経験で、生涯忘れられない思い出がいっぱいです。
行くときは不安だらけでしたが、研究がうまくいった時や、娘が英会話やけがを克服した時には、みんなで抱き合って喜びました。
私は野球観戦が大好きなのですが、ボストンには大リーグのレッドソックスがあり、友人と家族みんなで松坂選手とイチロー選手の対決をスタンドから観戦出来たのは幸運でした。
最近では、スポーツ選手、音楽家、映画俳優、医師、研究者など海外で活躍する日本人が当たり前になっており、彼らにエネルギーをもらうのは私だけでしょうか。
循環器・腎臓内科では大学院修了後、男女や年齢を問わず、希望者には留学の門戸が開かれており、そのサポート体制は万全です。経験者が多いことも幸いしており、親身に相談に乗って頂けます。
また臨床留学で、アメリカの医師免許を取得されている先生が代々いるのも、当科の特徴です。
国際学会の参加も当科は積極的です。
3月にはアメリカ心臓病学会、6月には欧州腎臓透析移植学会、9月には欧州心臓病学会、11月にはアメリカ循環器学会およびアメリカ腎臓病学会があります。
論文になる直前の情報が得られるのは知的好奇心が刺激されます。
そして自分の仮説や研究結果を伝えるのは、ドキドキの連続です。
専門家や有名な先生とディスカッションすることでお互いの考えを高め合ったり、論文ではわからない苦労話をお互いにしたり、メールアドレスや名刺交換をしたり、とても素敵な経験だと思います。
そしてレベルの高い研究をすれば、出身大学を問わず国際的に評価されるのが研究の醍醐味です。
最終的には、学会を通じて国際共同研究に参加し、それが目の前の患者さんの予後やQOLに結び付けば、医師としてこれほど幸福なことはありません。
これらは大学に所属して初めて可能になることも多いと思います。
君も我々と一緒にこのような経験をしてみませんか?