基礎医学系講座

幹細胞発生学Department of Stem Cell and Developmental Biology

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幹細胞発生学 幹細胞発生学

当講座では、幹細胞学、発生学的視点から、器官形成過程における細胞間相互作用や特定細胞系譜の寄与/機能、また幹細胞の分化過程における細胞系譜の分岐様式を、まず細胞レベルで明らかにし、さらにその現象の基盤となる分子機構を解明することを目標にしています。特に、神経堤由来幹細胞の発生機序、器官形成への寄与やその機能、また造血系/免疫系の発生機序について、マウス(胚)を用いたin vivo実験系や各種幹細胞を用いたin vitro実験系の両面から解明を目指しています。

教 授
山崎英俊
准教授
山根利之
学部担当科目
生理学1
附属病院診療科
-
居室
先端医科学教育研究棟 4階

研究・教育内容

神経堤細胞の発生分化機構、器官形成への関わりについて

神経堤細胞は、外胚葉を起源とする神経管の癒合部から発生する細胞集団で、神経系や色素細胞のみならず、間葉系細胞(骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、象牙芽細胞)にも分化し、頭蓋顔面や心臓、胸腺や骨髄の形成にも関わっています。我々は、神経堤由来細胞を蛍光標識出来るマウスや胚性幹細胞株を用いて、神経堤のみに由来すると考えられる色素細胞と象牙芽細胞に焦点をおき、神経堤由来の間葉系分化能を持つ前駆(幹)細胞を単離・同定し、これらの細胞を用いた器官形成(骨髄・歯)の可能性について研究しています。また、神経堤細胞が骨髄や胸腺の非血液細胞分画に寄与することから神経堤細胞欠損モデルを用いて、神経堤細胞の骨髄や胸腺での役割についても研究しています。これらの研究から神経堤細胞が間葉系の細胞系譜にどのように運命決定され、器官形成にかかわるのかを明らかにしたいと考えています。

造血系・免疫系の発生分化機構について

血液細胞は、ガス運搬、止血反応、骨吸収、非自己物質の排除機構など生体の維持に不可欠な諸機能に関わっています。これらの機能を担う十数種類にもおよぶ血液細胞を賄う造血システムは、胎生期に確立され、成体の幹細胞システムへと移行していきます。しかしながら胎生期において造血系・免疫系がどのようにして構築されるのか多くはわかっていません。これまでに我々は胎生期の造血系の系譜関係を明らかとし、その分岐過程の分子機構を解明してきました。現在、これらの研究をさらに進めるとともに、これまでの研究から得られた知見を元にして、線維芽細胞からリプログラミングによって造血細胞を作製する技術を開発しています。

画像1
1.神経堤由来細胞を蛍光標識できるマウス
画像2
2.胎仔骨髄及び末梢血の神経堤由来細胞の色素細胞への分化誘導
画像3
3.胎生期における造血細胞の系譜図
画像4
4.多能性造血と胎仔赤血球造血の分岐過程における転写因子制御

研究業績

  1. Depletion of neural crest-derived cells leads to reduction in plasma noradrenaline and alters B lymphopoiesis.


    Tsunokuma N, Yamane T, Matsumoto C, Tsuneto M, Isono K, Imanaka-Yoshida K, Yamazaki H*.
    J Immunol 2016 In Press

  2. epression of Primitive Erythroid Program Is Critical for the Initiation of Multi-Lineage Hematopoiesis in Mouse Development.


    Yamane T*, Ito C, Washino A, Isono K, Yamazaki H.
    J Cell Physiol. 2017 Feb;232(2):323-330. doi: 10.1002/jcp.25422.

  3. Common developmental pathway for primitive erythrocytes and multipotent hematopoietic progenitors in early mouse development.


    Yamane T*, Washino A, Yamazaki H.
    Stem Cell Reports. 2013 Nov 27;1(6):590-603. doi: 10.1016/j.stemcr.2013.10.008.

  4. Earliest hematopoietic progenitors at embryonic day 9 preferentially generate B-1 B cells rather than follicular B or marginal zone B cells.


    Ito C, Yamazaki H, Yamane T*.
    Biochem Biophys Res Commun. 2013 Jul 26;437(2):307-13. doi: 10.1016/j.bbrc.2013.06.073.

  5. Origins and properties of dental, thymic, and bone marrow mesenchymal cells and their stem cells.


    Komada Y, Yamane T, Kadota D, Isono K, Takakura N, Hayashi S, Yamazaki H*.
    PLoS One. 2012;7(11):e46436. doi: 10.1371/journal.pone.0046436.

  6. Expression of AA4.1 marks lymphohematopoietic progenitors in early mouse development.


    Yamane T*, Hosen N, Yamazaki H, Weissman IL*.
    Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Jun 2;106(22):8953-8. doi: 10.1073/pnas.0904090106.

  7. Potential of dental mesenchymal cells in developing teeth.


    Yamazaki H*, Tsuneto M, Yoshino M, Yamamura K, Hayashi S.
    Stem Cells. 2007 Jan;25(1):78-87.