研究紹介

病変部組織の再構築前期を標的とする診断・治療
−テネイシン-Cを中心として−

テネイシン-Cの役割

 さまざまな原因からおこるいろいろな病気は一見違った像にみえますが、基本的には同じような進行の仕方をします。つまり、臓器などに炎症が生じると細胞成分が主体となる再構築前期を経て、線維化が起き臓器の機能が失われる時期(再構築後期)、具体的には肝硬変や肺線維症などとなり、治療することが困難となります。当研究室が研究を続けている分子テネイシン-Cは、この一連の過程の再構築前期に特徴的に出現するタンパクです。この分子は組織リモデリングの方向性と進行速度を決定づけると考えて、さまざまな疾患での役割を研究してきています。発生期におけるテネイシン-Cの役割についても研究をしています。
診断・治療への応用

 さらに、テネイシン-Cを標的として検査すれば、病気の部位や病気の進行の速さを診断でき、臓器の機能がなくなる前に治療を効果的に行えます。また、いろいろな病気の組織に出現しますので、心筋梗塞などの心疾患の診断、老人に多い変形性骨関節症の進行度の評価や乳癌の進行度の判定にも有用です。また、この分子を治療標的とすれば、組織再構築の制御が可能で、たとえば産生を抑制することにより、心臓血管のバイパス術後の血管閉塞などが予防できます。逆に、この分子を付着させたコイルを用いて、瘤内の組織再構築を促進させ、くも膜下出血の原因である動脈瘤を血管内から治すことを目指しています。

血中テネイシン-C測定キット

 血中のテネイシン-Cを測定できるキットは、(株)免疫生物研究所(リンク→新しいウィンドウへ)から発売されています。


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