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自閉症、ASD等の発達障害解明の研究を行っています。

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14歳の飼い犬

2015年5月7日 成田正明

愛犬“トト”が14歳だ。25kg位のメスの芝系雑種。
最近めっきり足腰が弱ってきた。
日中は寝てばかりで、あれほど好きだった散歩もおっくうになってしまったようだ。
足腰だけでなく、悲しいことに今では私のこともわからなくなってしまったようだ。
犬の14歳と言えば人間でいうと100歳。そういう歳なのか。

 思い起こせばトトちゃんは2001年の2月の厳寒の朝の散歩中、道端に生まれたばかりの4匹が段ボールに入って捨ててあった1匹だ。
2月の早朝だ。このまま放って通り過ぎてしまったら、あと5分くらいで凍死してしまう。
あとさき考えず4匹丸ごと抱きかかえて家に連れて帰った。
家に帰ると「あらあら」という感じで妻が出てきて手助けしてくれた。
しかし家にはすでに5歳のメス犬(ひとみ=同じく捨てられた雑種2010年14歳で死亡、詳しくは“ひとみすみれ”を)と3歳の娘がいる。
手がかかる。4匹全部飼うのは無理だ。
やむなく里親探しをし、何とか4匹中3匹の引き取り手が見つかったのだが、最後の1匹だけ行先が見つからず「仕方ない」って感じでその残りの1匹をうちで飼うことになった。一番色合いが悪く誰も選ばなかった、それがこのトトちゃんである。

 それ以来、5歳上の姉貴分のひとみと一緒にずっと私との早朝散歩は毎朝毎朝欠かさなかった。
もとより犬を飼うのは慣れない私だったが、トトちゃんは私が命の恩人であることを知ってか知らずか、すっかりなついてくれた。長い蜜月状態だった。

 その後私が単身赴任になって月に何回かしか会うことはできなくなっても、私が夜遅く家に戻ると家中のみんなは寝静まっているのに、どんなにそおっと門を開けてもひとり起きてきてくれて、ご近所中に響く声でひとしきり騒ぐ。
娘曰く「トトちゃんさあ、ふだんあんな興奮する声、絶対出さないよね」みたいな感じである。
三重の匂いですねって感じでしばらく私の体中の匂いを嗅ぎ続ける。
興奮しすぎて失神してしまったことも何回かあった。

 そのトトちゃんである。
14歳を過ぎた今年初めころからめっきり弱ってきた。足腰だ。立つのもおぼつかない。褥瘡?らしきものもひどい。
でもそれよりなによりショックなのは、どうやら私のことわかんなくなってしまったようなのだ。
妻や娘のことははっきり分かるのに、だ。この2月以降は私が三重からから久しぶりに戻っても以前のような喜びの雄叫びもなし。
目も全然合わそうとしない。においも嗅ごうとしない。
散歩は行くには行くが、知らない契約散歩おじさんに散歩してもらってるっていう感じだ。
散歩が始まっても妻や娘のほうをちょこちょこちょこちょこ振り返っている。

認知症なのか。きっとそうだ。
これはたいそう寂しい。寂しいのは間違いない。いつかは親兄弟でもそういうことが起きる。
そんな時どういう気持ちになるのか想像できなかった。
自分のことわからなくなった相手のことを自分はどう思うか恐ろしかった。
これは国語の苦手な私にはうまく字にはできないけど。
その気持ちのほんの入り口を犬で経験させてもらってありがたいと思う。

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