臨床工学部紹介
臨床工学技士は1987年5月に制定された「臨床工学技士法」に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格であり、医師の指示の下、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う事を業とする医療機器の専門医療職種です。
近年、医療現場には多数の高度医療機器が導入され、医療機器の安全性や信頼性が患者様の生命や安全に影響を与える事が危惧されます。臨床工学技士はこれらの医療機器を安全に操作、管理することが求められるようになりました。
当院でも、地域中核病院として高度先進医療を推進し、より安全な医療を患者様に提供するために2000年4月より臨床工学技士を採用しました。
2002年にはME室を設置、スタッフの増員と共に業務拡大を進めてまいりました。
2009年に臨床工学部として改組を行い、現在では29名の臨床工学技士と1名の技術補佐員で構成されています。
臨床工学部 設立15周年記念誌
Front-line 三重大学病院
当部紹介の動画です.
沿革
2000年 4月 | 臨床工学技士が初採用となり、体外循環業務、血液浄化業務を開始 |
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2001年 4月 | 光学医療診療部が設置され、光学医療診療(内視鏡)業務を開始 |
2002年 4月 | ME室が設置され、竹田 寛教授がME室室長に着任 医療機器の中央管理業務を開始 |
2004年 9月 | 手術支援業務を開始 |
2007年 4月 | 小児・成人循環器業務を開始 |
2009年 1月 | ME室から臨床工学部に改組、伊佐地 秀司教授が臨床工学部部長に着任 |
2010年 2月 | 放射線治療(RFA)業務を開始 |
2011年 2月 | 救急集中治療業務を開始 |
2012年 1月 | 三重大学病院 新病棟が稼動し、臨床工学部が移転 |
2012年 2月 | 24時間当直業務を開始 |
2015年 4月 | 岩田 英城が臨床工学部技士長に着任 |
2019年 4月 | 近藤 峰生教授が臨床工学部部長、山田 昌子が臨床工学部技士長に着任 |
2019年 10月 | 須藤 啓広教授が臨床工学部部長、亀井 政孝教授が臨床工学部副部長に着任 |
2020年 7月 | 竹内 万彦教授が臨床工学部部長に着任 |
2021年 4月 | 山田 昌子が臨床工学部技士長に着任 |
2025年 4月 | 井上 貴博教授が臨床工学部部長に着任 |
業務紹介
血液浄化
入院を要する腎不全患者様に対し血液透析治療を行い、24時間臨床工学技士が安全な治療に努めています。
救急領域では持続的血液濾過透析は年間300件を超えており、あらゆる急性血液浄化に迅速に対応しさらに各種難治性疾患に対する血漿交換療法や吸着療法、腹水濾過濃縮等の特殊血液浄化も多数実施しています。また機器管理や透析液の水質管理に重点を置き、患者さんに安心して治療を受けていただけるよう努めています。
体外循環
体外循環では、開心術等で使用される人工心肺装置の操作を行っています。人工心肺装置は、貯血槽、血液ポンプ、人工肺、血液フィルター、血液濃縮器、チューブ、モニタリング機器から構成されており、臨床工学技士が組み立て操作します。 手術中に人工心肺装置にトラブルが発生すると人命に直結する大事故となります。臨床工学技士はこのようなトラブルに対応するためシミュ―レーショントレーニングや機材の準備、環境整備を行っています。 当院は、先天性心疾患・弁膜症・虚血性心疾患・大血管手術など幅広い症例に対応しており機材選択や操作方法等、患者さんに適した人工心肺が行えるよう日々研鑽に努めております。またより良い人工心肺を追及するための研究活動も積極的に行っています。
医療機器管理・手術支援
病院で使用される医療機器の統括管理を行っています。業務は大きく2つに分ける事が出来ます。1つは医療機器の保守管理、もう1つは手術機器の操作です。 医療機器の保守管理では、輸液ポンプ・シリンジポンプ・除細動器・電気メス・麻酔器など、院内で使用される大多数の機器を中央管理しています。使用中の安全を維持するための定期点検や故障や破損が発生した時の保守を行っています(定期点検:約5000件、保守点検:約1400件)。また、スタッフへの機器説明会の開催や在宅患者さんへの機器貸出し時の使用方法の説明も重要な業務の一つになります。 手術機器の操作では、内視鏡装置やナビゲーション装置、手術支援ロボット、眼科関連機器等の準備、操作などを行っています(年間約3800件)。手術では一人の患者さんに複数の機器が使用されるため、これらの機器の安全を守ることが我々の重要な役割になります。院内の全ての医療機器が安全に使用されるようにハード・ソフトの両面から業務に取り組んでいます。
光学医療診療
光学医療診療には、検査室が5室(うち透視装置付が2室)あり、上部消化管・下部消化管・気管支鏡などの検査を年間約4000件行っております。また、内視鏡による様々な治療(静脈瘤に対する硬化療法(EIS)/結紮術(EVL)、粘膜切除術(EMR)、粘膜下層剥離術(ESD)などの治療は約900件)や、肝胆膵領域における治療(採石や胆道ドレナージ術(ERBD)、内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)年間約300件)、小腸内視鏡(約100件)、カプセル内視鏡(150件)も積極的に行っております。 内視鏡室では、様々な検査や治療に対応するべく、39機種66本のスコープをはじめ400種類以上の処置具を保有しております。 我々、臨床工学技士はこれらのスコープが適正に洗浄消毒されているか細菌検査を行ったり、検査や処置を安全に進めるための各種処置具の準備や保守管理を行っております。 また検査・治療時には患者様が安心して治療を受けていただけるように看護師と共に患者の介護や医師の手技介助などのサポートを行っています。。
IVR・植込みデバイス
IVR・植込みデバイスでは、各科の専門医師を中心に看護師・診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士とチームを構成し、患者さんが安全にかつ安心して検査・治療が施行できるように診療サポートしています。
また、最新の3D解析ツールを備えた血管撮影装置および、フラットパネル搭載型のバイプレーン血管撮影装置、Hybrid ORを含めた5台の血管撮影装置を用いて血管造影検査(CAG:年間500例)や血管内治療(PCI:年間約300例、EVT:年間100例、TAVI:年間30例)を行っています。臨床工学技士は、血管内超音波(IVUS)や光干渉断層装置(OCT)、ポリグラフを操作し治療補助を行っています。また、急変時は補助循環装置(IABP・IMPELLA・ECMO)を施行できる体制を整えています。 その他、肺動脈の狭窄や閉塞に対するバルーン肺動脈形成術(年間10例)、心房中隔欠損のカテーテル治療等(年間42例)、不整脈に対する心臓植込みデバイスの植込み(年間60例)および管理(年間600例)、カテーテルアブレーション(年間150例)や経皮的ラジオ波焼灼療法(年間150例)など多岐に渡る治療補助も臨床工学技士が行っています。
救急集中治療
臨床工学技士の各センターにおける業務内容は呼吸療法、急性血液浄化、補助循環、医療機器の保守管理に大別され、専任1名、兼務23名のスタッフで業務をしています。
呼吸療法としては総合集中治療センターだけでも年間400人を超える人工呼吸器装着患者さんが存在し、医師や看護師、理学療法士、薬剤師など様々な職種と協力しチーム医療に貢献しています。また、院内の呼吸サポートチームにも所属し呼吸療法に関する教育や安全管理、相談役としても活躍しています。
急性血液浄化、補助循環においても新生児から高齢患者さんまで多岐にわたる疾患に対し、安全で質の高い医療の提供をめざし24時間365日院内常駐体制で対応しています。血液浄化部門での紹介にもありますが持続的血液濾過透析療法は年間300件を超え、院外心肺停止の循環補助や重症呼吸不全に対する呼吸補助も待機例含め年間30件以上の実績があります。
医療機器管理の面では各センターの高度先進化する多様な機器を把握し、保守点検を行うことで安全安心な医療の提供に貢献しています。また、ドクターヘリ内の医療機器の保守点検やトラブルにも対応し、重症患者さんの搬送にも関わっています。
その他
学会認定資格の取得も積極的に推進し、透析技術認定士・呼吸療法認定士・体外循環技術認定士・消化器内視鏡技師などを取得しております。
学会認定資格取得者
資 格 | 人 数 |
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第2種ME技術者 | 18名 |
第1種ME技術者 | 4名 |
臨床ME専門認定士 | 4名 |
透析技術認定士 | 12名 |
3学会合同呼吸療法認定士 | 6名 |
消化器内視鏡技師 | 1名 |
医療機器情報コミュニーケータ(MDIC) | 2名 |
認定ホスピタルエンジニア(CHE) | 1名 |
心血管インターベンション技師 | 3名 |
4学会合同体外循環技術認定士 | 4名 |
心電図検定3級 | 4名 |
集中治療専門臨床工学技士 | 1名 |
急性血液浄化認定指導者 | 1名 |
日本DMAT | 1名 |
FCCS Associateinstructor | 1名 |
FCCS プロバイダー | 3名 |
植込み型心臓デバイス認定士 | 3名 |
認定集中治療関連臨床工学技士 | 1名 |
第2種滅菌技士 | 1名 |
呼吸療法専門臨床工学技士 | 1名 |
認定集中治療臨床工学技士 | 1名 |
専門不整脈治療臨床工学技士 | 1名 |
専門心・血管カテーテル臨床工学技士 | 1名 |
第3級陸上特殊無線技士 | 1名 |