心不全における心機能及び血行動態評価において、現在では心エコーなどの非侵襲的検査が多くの役割を担っているが、これらの非侵襲的検査による左室圧・右室圧などは間接的な情報であり、いまだカテーテル検査による圧測定がゴールデンスタンダードである。左室容積及び圧の同時測定は、様々な病態の心血行動態を評価するのには極めて有用である。Pig Tail型の6Frコンダクタンスカテーテルという左室容積測定用のカテーテルの中に、マイクロチップを内蔵した2Frのカテ先圧マイクロチップカテーテルを挿入し、左室内に留置することで、経時的に左室圧−容積関係が求められる。左室エラスタンス(Ees or Emax)のような左室前・後負荷に非依存性の収縮性の指標だけではなく、左室弛緩能、充満能、左室の硬さ(Stiffness)という左室拡張能や、さらに左室の非同期性運動も評価可能である。
我々は、1998年から現在(2007年12月)までこの手法で、300例を越える心不全患者の心血行動態の測定を行い、診断、病態把握、治療方針、治療効果判定に役立てている。それぞれのデータをまとめることにより、心不全に対する経静脈的心不全治療薬の効果判定、頻拍に対する左室応答、心房細動時の左室機能評価、拡張期心不全の病態解明、左室負荷の左室非同期性運動への影響など多数の検討結果を、日本循環器病学会総会を中心とした国内学会及びAHAを中心とした国際学会に発表し、論文にしている。
動物実験でもイヌ慢性心不全モデルを用いた内因性神経体液性因子のin vivoでの相互作用を血行力学的、および組織学的に評価し、多くの成果をあげている。イヌ高頻拍性慢性心不全において、内因性エンドセリンはアンギオテンシンUの心血管作用とは独立して心収縮性、弛緩能、左室大動脈整合を障害することを示し、またアンギオテンシンU受容体拮抗薬はACE阻害薬投与下の心不全においてブラジキニンの作用を介して心機能低下を防止し、心筋の線維化も抑制することを示した。
- 2007年の主な学会発表
- Serum Tenascin-C Levels Predict Hospitalization for Decompensated Heart Failure in Patients with Dilated Cardiomyopathy. Fujimoto N et al. ACC 2007.

