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腎臓病について

日本には慢性腎臓病(CKD)の患者さんが約1,330万人、三重県でも治療が必要な腎臓病の患者さんが約9万人みえると推算されています。腎臓病の原因 は、IgA腎症など慢性糸球体腎炎、糖尿病や高血圧に合併する場合や、お薬による腎障害など多岐にわたります。早期発見、早期治療により完全に治る腎臓病 もあります。

慢性腎臓病(CKD)質問コーナー

Q慢性腎臓病って、なんですか?

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)とは、腎臓の障害を示す所見や、腎臓のはたらきの低下が3ヶ月以上続いている状態のことを言います。

腎臓の障害を示す所見には以下のものがあります。

  • 尿蛋白などの検尿異常
  • 片腎や、のう胞腎など腎臓の形態異常
  • 血清クレアチニン値の上昇など血液検査の異常
  • 腎生検による腎病理組織検査の異常

また、腎臓のはたらきは、推算糸球体ろ過量(estimated glomerular filtration rate: eGFR)で知ることができます。eGFRは年齢、性別、血清クレアチニン値から計算することができます。eGFRが60mL/分/1.73m2未満であると慢性腎臓病(CKD)です。

Q推算糸球体ろ過量(eGFR)って、なんですか?

推算糸球体ろ過量(estimated glomerular filtration rate: eGFR)とは、年齢、性別、血清クレアチニン値から計算される数値で、自分の腎臓のはたらきを数字で知ることができます。eGFRは100点満点の学校のテストの点数に例えると分かりやすいです。

  • eGFR 90以上 正常
  • eGFR 60~89 軽度腎機能低下
  • eGFR 30~59 慢性腎臓病(CKD)で、中等度の腎機能低下があります
  • eGFR 15~29 慢性腎臓病(CKD)で、高度な腎機能低下があります
  • eGFR 15未満 腎不全の状態で、透析など腎代替療法の準備が必要です

学校のテストはだいたい60点以上で合格点ですが、60点を切ると注意が必要なのはテストもCKD(慢性腎臓病)も同じです。eGFRは、日本慢性腎臓病対策協議会のホームページ(http://j-ckdi.jp/ckd/check.html)などで簡単に計算することができます

Q慢性腎臓病はなぜ問題なのですか

1非常に頻度の高い病気であること

日本では約1330万人、実に成人8人に1人が慢性腎臓病(CKD)であると計算されています。三重県でも約9万人のかたが治療の必要な慢性腎臓病(CKD)だと推定されます。

2健康をおびやかす重大な疾患であること

慢性腎臓病(CKD)があると、将来腎不全で透析などの治療を受ける可能性が高くなります。さらに心筋梗塞や脳卒中など心臓血管病にもかかりやすくなります。これらの合併症は重大な後遺症を残したり、最悪死亡につながることもあるため、早期の対策が必要です。

3進行に応じて適切な治療が可能であること

慢性腎臓病(CKD)を早期に発見し、食事療法(減塩)や血圧管理を適切に行うことで、将来の腎不全や、心筋梗塞・脳卒中などの心臓血管疾患の合併を減らすことが可能です。

Qどんな人が慢性腎臓病になりやすいのですか?

糖尿病がある方、血圧の高い方は要注意です。また、年齢とともに腎臓の働きは少しずつ低下していくため、高齢者も慢性腎臓病(CKD)の可能性が高まります。60歳代では約15%、70歳代では約30%、80歳代ではなんと約45%の方がCKDであったと報告されています。

Q慢性腎臓病をはやく見つけるにはどうすればよいでしょう?

健康診断を毎年受けましょう。尿検査でたんぱくや潜血がひっかかった場合は、必ず二次検査を受けましょう。また、血液検査でクレアチニンの測定があれば、推算GFRを計算してみてください。あなたの腎臓のはたらきが100点満点中の何点であるかを知ることができます。60点未満であった場合は慢性腎臓病(CKD)の可能性が高いです。かかりつけの先生に相談してみましょう。

Q慢性腎臓病では日常生活で何に気をつけたらよいのでしょう?

  • ストレスや過労で腎臓病は悪化しやすいため、できる限り避けましょう。
  • たばこは腎臓病を悪化させます。禁煙に取り組みましょう。
  • 肥満、運動不足、メタボリックシンドロームも腎臓病に悪い影響を与えます。適度な運動をこころがけましょう。
  • 減塩が重要です。日本人の1日塩分摂取量は約10gですが、慢性腎臓病(CKD)があると塩分3~6gが目標となります。外食を減らし、味付けを薄くしましょう。
  • 血圧管理も重要です。普段の血圧が130 / 80 mmHg以上である場合は、かかりつけの先生に相談してみてください。
  • お薬にも注意が必要です。腎臓病があると、解熱鎮痛剤(熱冷ましや痛み止め)により腎臓のはらたきが急激に悪化することがあります。市販の解熱鎮痛薬でも腎臓を悪くさせることがあり注意が必要です。また、腎臓のはたらきが悪くなると、お薬の量を減らしたり、服用する間隔をのばしたりする必要がでてくる場合があります。現在内服中のかたは、一度かかりつけの先生に相談してみてください。
  • 尿検査でたんぱくが多いほど、腎臓病の進行が早く、また脳卒中や心筋梗塞などの心臓血管病にかかりやすくなります。定期検査で検尿を行い、尿たんぱくが増えていないか確認しましょう。

毎年3月の第2木曜日は世界腎臓デー(World Kidney Day)です。
三重県でも、毎年3月上旬の日曜日に三重県慢性腎臓病対策県民公開講座「あなたの腎臓を守る」を開催しています。ぜひご活用ください。

文責:三重大学医学部附属病院腎臓内科 科長 石川 英二