第49回日本結合組織学会学術大会

ワークショップ
ワークショップとして5つのテーマを企画していただきました。
WS-1 結合組織破壊の分子メカニズムの新展開(16日予定)

オーガナイザー:

齋藤 正寛 先生( 東北大学大学院歯学研究科 歯科保存学分野)

ワークショップの課題
結合組織破壊は、大動脈瘤、骨系統疾患等の結合組織疾患のみならず動脈管閉鎖等の組織発生過程で起こる現象として知られています。その分子メカニズムは従来から提唱されていた炎症刺激に加え、細胞外マトリックス合成の抑制、機械的刺激の破綻、細胞接着の機能異常までが関与する事が示され、結合組織破壊は多様なメカニズムで誘導されることが明らかにされつつあります。そこで本ワークショップは、結合組織破壊の分子メカニズムに関する理解を深めるため、発生から疾患研究までの幅広い分野から課題を募集します。
ワークショップを開く意義
結合組織の破壊、すなわち細胞外マトリックスネットワークの崩壊は、循環器疾患、骨系統疾患、腎疾患、小児疾患、眼科疾患、歯科疾患などの多くの領域で取り扱う共通の現象となります。その多くは破壊の中心的な役割を果たすMMPs, ADAMTSsを中心に、各疾患および臓器発生過程における組織破壊機構の研究が進められています。この組織破壊機構に関して、幅広い分野から情報提供を行い、新しい疾患生物学の概念へ展開することを期待します。
WS-2 がん微小環境の実体(16日予定)

オーガナイザー:

渡辺 秀人 先生(愛知医科大学分子医科学研究所)

ワークショップの課題
がんの浸潤と遠隔転移に関しては、長年に亘って細胞外マトリックスの破壊が深く関与すると考えられ、マトリックスメタロプロテアーゼ、ADAM、ADAMTS等の蛋白質分解酵素ががん浸潤の過程で主たる役割を果たすとされている。また腫瘍血管新生や局所の酸素濃度等もがんの増殖と浸潤に大きな影響を与えることがわかっている。本ワークショップでは、がんの微小環境の本体である細胞外マトリックスの変容に焦点を当て、微小環境を形成する線維芽細胞、炎症細胞、血管内皮/周皮細胞とがん細胞との相互作用やがんの挙動に対する細胞外マトリックス分子群の影響について論じたい。
ワークショップを開く意義
近年、細胞の挙動は周囲の環境によって制御されるとの概念が確立されており、がんの研究分野においても微小環境としての細胞外マトリックスの重要性は認知されつつある。本ワークショップにおいて様々な分子に取り組んでいるマトリックスの専門家がデータを持ち寄り情報を共有することで、新たなアイディアが生まれたり統合的研究が展開できると期待される。
WS-3 臓器の枠を超えた線維化研究の集結(17日予定)

オーガナイザー:

芦田 昇 先生(京都大学大学院医学研究科 循環器内科)

ワークショップの課題
疾患別・臓器別に行われている線維化研究の最新の知見を分野を越えて互いに情報共有することにより、線維化共通の核となる概念やメカニズム、あるいは疑問点を浮き彫りにする。
ワークショップを開く意義
線維化はいわゆる慢性炎症が原因とされる様々な疾患の基盤を形成しているが、線維化の病理学的成り立ちには共通の機構があると推測される。しかしながら線維化のメカニズムがあまりにも未知であることもあって、これまで線維化の研究は疾患別・臓器別・学会別に行われており、その相互の情報共有はあまり行われていないのが現状である。本ワークショップでは各臓器における線維化研究の最前線を並列的に俯瞰することにより、そこから線維化共通の核となる概念やメカニズム、あるいは疑問点が浮かび上がってくることを期待する。
WS-4 高齢化社会における結合組織学(17日予定)

オーガナイザー:

磯貝 善蔵 先生(国立長寿医療研究センター)

ワークショップの課題
加齢性に起因する運動器、肺、血管、皮膚、脳などの疾患を結合組織の観点からみる。 結合組織の分子から組織そしてその臓器機能への相互関連を含めた理解を基盤に、加齢による結合組織の病理変化とその背景や、結合組織学と高齢者医療との関連について取り上げる。
ワークショップを開く意義
高齢化社会の医療においては結合組織の老化に起因する疾患は多いと思います。しかし、各臓器別の診療・研究では様々な疾患が結合組織学の観点から検討されていないことも多いと考えています。例えば高齢者の感染症においても、局所臓器の結合組織の加齢性変化が、繰り返す局所感染をおこすことが多いと感じます。このような背景において結合組織学・結合組織学会が高齢化社会における医療に貢献することが求められています。本ワークショップは結合組織の老化に関する演題を広く、また多角的に募集して新しい視点から結合組織学を考える機会にしたいと思います。
WS-5 関節の修復・再生(17日予定)

オーガナイザー:

長谷川正裕 先生(三重大学大学院医学系研究科 整形外科)

ワークショップの課題
関節構成体である関節軟骨・半月板・靱帯・筋・神経の修復・再生について、結合組織の観点から考察する。 軟骨と半月板はコラーゲンとプロテオグリカンの豊富な細胞外マトリックスを持っている。修復・再生において、細胞だけでなく、細胞外マトリックスの観点からもメカニズムを理解し、臨床応用を目指す。
ワークショップを開く意義
関節軟骨や血行のない半月板の修復・再生は困難で、未だ確立された方法はないため、新しい治療について、靱帯、駆動筋、神経も含んで検証する。 関節軟骨は、極めて自己修復能力に乏しく、軟骨損傷を放置すると、変形性関節症となる危険がある。様々な修復方法や変性抑制の試みがなされているが、特に広範囲の軟骨変性、損傷に対する修復・再生の方法は確立されていない。半月板も治癒能力にとぼしく、特に血行のない部分での修復は非常に困難である。靱帯損傷も、半月板損傷とともに軟骨変性、変形性関節症の原因となる。駆動筋の働きも関節にとって重要である。 関節軟骨・半月板・靱帯・筋・神経の修復・再生について、分子学的メカニズムの理解、最新の治療紹介を行い、臨床に役立てる。