平成14年度開始 科学技術振興事業団 戦略的創造研究推進事業 (CREST プログラム)
「免疫難病・感染症等の先進医療技術」(研究総括:岸本忠三)
「マラリア感染成立の分子基盤の解明と新たな感染阻止法の創出」(研究代表:鎮西康雄)
研究目的
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研究の背景
1. マラリアの現状
2. マラリアのライフサイクル
マラリア原虫は、蚊をベクター(運び屋)として、脊椎動物に寄生する、単細胞の生物である。その生活環は、異なる宿主の体内で効率良く寄生を成立させるように、複雑に変化する。感染したヒトの体内では、赤血球感染ステージ(メロゾイト)とよばれる原虫が多数存在し、赤血球に侵入、増殖を繰り返す。そのうちの一部は生殖母体(ガメトサイト)と呼ばれる形態をとり、これが蚊の吸血により蚊の中腸に入ると、受精し、オオキネートになる。オオキネート中腸上皮細胞を通り抜けて、基底膜のところでオオシストとなり、スポロゾイトを形成、放出する。オオシストから放出されたスポロゾイとは、蚊の唾液腺に侵入し、蚊の吸血により宿主体内に侵入し、マラリア感染を引き起こす。
3. 哺乳類への伝播阻止法の可能性
スポロゾイトを標的とする有効な感染阻止法の確立は、人へのマラリアの伝搬を阻止し、原虫のライフサイクルを断つことで、マラリアの感染率の低下、制圧・撲滅に劇的な効果を上げることが期待できる。実際に、1960年には、γ線照射により感染能を失ったスポロゾイトをマウスに静注することで、感染防御効果を誘導することができたという報告がなされている。また一匹の蚊から放出されるスポロゾイトの数はわずか数十匹に過ぎず、耐性原虫の出現する可能性は極めて低い。しかしながらスポロゾイト期の研究は材料の得にくさのためからか、感染経路を含め現在でもほとんど研究が進展していない。
4. マラリアの分子生物学
2002年秋に、ヒト熱帯熱マラリア原虫 (plasmodium falciparum)のゲノム配列が公開された。また、モデルとしてのネズミマラリア原虫(P. yoelii, P. berghei)のゲノムもほとんど解読されている。これ以降、マラリアの研究に分子生物学を適用する流れが盛んになって来た。現在では、発現時期の網羅的解明をめざし、ESTライブラリーの構築、マイクロアレイ法による解析、およびマススペクトラム解析などが行われている。また、マラリア原虫は、相同組換え法により目的遺伝子座を欠損させる事が可能であり、この手法を活用し、蛋白機能の解明が行われている。
研究戦略
1. 各ステージのEST databaseを構築する
2. いくつかの候補分子について遺伝子欠損原虫を作出
3. その表現型の解析から、蛋白機能を推測する
これまでの研究成果
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