病態生理
病態生理学研究の紹介 |
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1. 病態生理とは 2. 統合失調症の病態生理 3. 気分障害・不安障害の病態生理 4. てんかんの病態生理 5. パ−キンソン病の病態生理 6. ADHD・自閉症の病態生理 |
研究内容 |
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中枢神経系内の情報伝達機能の障害を基盤とした疾病を機能性疾患として位置づけ、化学情報伝達物質の、シグナル伝達、合成、代謝を超高速液体クロマツグラフ(UHPLC)5装置、質量分析装置、キャピラリー蛋白分離装置、real-time PCRを用いて解析しています。 1)神経-グリア伝達回路の解析 古典的な病態生理仮説として、統合失調症はドパミンの腹側被蓋野から前頭葉(中脳皮質ドパミン路)と辺縁系(中脳辺縁系ドパミン路)、気分障害はノルエピネフリンの青斑核から前頭葉(中脳辺縁系ノルエピネフリン路)、セロトニン縫線核から前頭葉(中脳辺縁系セロトニン路)の機能障害が、病態に重要な役割を果たしていることが明らかになっています。 三重大学精神神経科学分野は、従来の治療薬(抗精神病薬・抗うつ薬・情動安定化薬)では、十分に改善できなかった、神経認知と情動認知機能が、視床皮質炉の情報伝達機能の機能障害よって生じていることを明らかにしました。 2)クロザピンの病態生理解析 治療抵抗性統合失調症治療薬 クロザピンの作用機序は未だ十分に解明されていません。 また、頻度は稀ではあるが、致死性の有害反応(心筋炎・心筋症)、体重増加や代謝合併症もあります。加えて、これや有害反応発生時に、急速なクロザピンの中断による離脱症候群もあり、注意を要する特効薬です。 この複雑な作用機序を説明できる、新たな内在性情報伝達物質L-BAIBAを発見し、クロザピンの有用性と有害藩王がなぜ起きるのかを研究しています。 3)遺伝子改変モデル動物を用いた新規治療薬創薬基準 特殊なてんかん(常染色体雄性睡眠関連てんかん:ADSHE)の責任遺伝子を導入した遺伝子改変モデル動物の作出に成功しました。 このモデル動物は、人患者と同等の、症状治療薬反応正を獲得していただけではなく、病態も同等であることが実証されました。 この研究業績は、英国薬理学会誌で、新たな遺伝子改変モデル動物を用いた創薬基準として、紹介されています。 実験手法 1)UHPC(ultra high performance liquid chromatography) 従来のHPLCが200気圧であったのに対し、1000気圧以上の耐圧性を持った、液体クロマトで、これにより分離性能と測定感度が飛躍的に向上し、光学異性体分離も容易となりました。従来2時間以上を要した光学異性体アミノ酸分析が10分で可能、モノアミン(ドパミン、ノルエピネフリン、セトトニン)は3分以内で測定可能になりました。また、UHPLCと質量分析装置を組み合わせて、従来法では不可能であった、グリア伝達物質(ヌクレオチド・キヌレニン代謝系伝達物質)の測定も可能となました。 2)キャピラリー蛋白分離装置 従来のWestern blottingは、ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)でタンパクを電気泳動した後に、PVDF膜に転写したものに、一次抗体標識、二次標識抗体を標識するため、非常に煩雑で数日を要していました。 キャピラリー蛋白分離装置はキャピラリー電気泳動後に、キャピラリー内で一次抗体と二次標識抗体処理を自動処理することで、2.5時間で測定が可能となり、再現性も高い測定法です。 3)マイクロダイアリーシス 1980年代に開発された、脳内に遊離された古典的な化学情報伝達物質の測定装置ですが、唯一の遊離化学情報伝達物質の回収装置でもあります。三重大学精神神経科学分野では、マルチプローブ法を駆使して、神経回路機能の評価を行っています。 4)遺伝子改変モデル動物 多くのモデル動物は、ヒト疾病家系から同定された責任遺伝子を導入した遺伝子改変モデル動物、類似症候を誘導する化学物質を投与した薬理学的モデルであり、ヒト疾病と同等の表現型(症状)を獲得した、モデルはなくすべてが中間表現型モデルでした。三重大学精神神経科学分野は、本邦の自閉症と常染色体優勢睡眠関連運動発作(ADSHE)家系から同定された、CHRNA4遺伝子に相同するS286Lラットを作出し、世界初のヒト疾病と同等の、症状、病態、治療反応性を獲得したモデル動物の作出に成功しました。 従来の |