体外受精

体外受精

⼀般不妊治療で妊娠されない⽅や、精⼦が⾮常に少ない等の理由で自然妊娠が難しい患者さんに対しては体外受精を⾏います。体外受精には、⼤きく分けて刺激周期法と低刺激周期法があり、さらにはそれぞれに様々なバリエーションがあります。当院では、検査結果やこれまでの治療経過をふまえて、⼀⼈⼀⼈に最適な⽅法を、患者さんご本⼈と⼀緒に相談しながら決めていきます。

体外受精

刺激周期法

連日排卵誘発剤の注射を使⽤して多数の卵子を育てていき、1回の採卵で多くの卵⼦を獲得する⽅法です。1回に採れる卵⼦の数が多ければ、受精して胚移植可能な胚を多く獲得することが期待できます。複数個ある胚の中から最適なものを⼦宮の中に移植します。胚移植しなかった胚は凍結保存することができるため、1度目の胚移植で妊娠しなかった場合には凍結保存しておいた胚を移植することができます。また、胚移植で妊娠が成⽴した場合は、次の妊娠のために引き続き胚を凍結しておくことが出来ます。胚の質は年齢に依存することが多く、第2子以降の妊娠のために、複数個の胚を凍結保存しておく方もおられます。
刺激周期法には、GnRHアゴニスト点⿐薬を使⽤するLong法、Short法と、GnRHアンタゴニスト注射を使⽤するアンタゴニスト法の3つに分けられます。それぞれの患者さんに適切な⽅法を選択していきます。

低刺激周期法

⾃然の排卵周期に合わせ、薬剤を使用しないか⽐較的作⽤の弱い薬剤を使⽤して卵子を育てる⽅法になります。加齢や早発閉経などの理由で卵巣に残存する卵子が少ない場合や、刺激周期法でうまくいかない場合には、この⽅法で卵子を育てていきます。刺激周期法と⽐べて1回あたりに採卵できる卵子の数は少なくなりますが、卵巣への負担が少ないため毎周期採卵が可能というメリットがあります。当センターでは、低刺激周期の場合は、複数個の胚を凍結保存した段階で内膜の状態を整えて⼦宮に胚を移植する⽅法を主に採⽤しています。

Progestin primed Ovarian Stimulation(PPOS)法

PPOS法は卵巣刺激の際に黄体ホルモン剤を併用する方法で新しい卵巣刺激法です。アンタゴニスト法と同様に卵巣予備能が良好で、確実に多くの卵子を採卵したいという方に適しています。月経2~4日目から卵胞発育のためにhMG/FSH注射をおこないます。 採卵周期の2~4日目より10回程度注射をおこないます。

未熟卵体外成熟培養法(In vitro Maturation; IVM)

卵巣から未熟な状態の卵⼦を採卵し、体外で成熟させ、その後受精させる⽅法です。多嚢胞性卵巣症候群などにより 刺激周期法により卵巣が大きく腫大する卵巣過剰刺激症候群のリスクが⾼い⽅や、⾼齢等の理由により卵の発育が途中で⽌まってしまうような⽅が対象となります。この⽅法を選択することで、卵⼦の成熟障害のある⽅にも妊娠の道が開けると考えています。

IVM

一般体外受精

卵⼦に調整した精⼦を直接ふりかけて、⾃然に受精するのを待つ⽅法が⼀般体外受精です。精⼦の状態が良好な⽅であれば、この⽅法が受精方法の第⼀選択になります。

顕微授精

精子の数が非常にすくなく、一般体外受精では受精しない方や、何らかの原因で精子が卵子に侵入できない受精障害の方に対しては、顕微授精を行います。顕微授精は、形態良好で運動性の高い精子を不動化し、顕微鏡で確認しながら卵子の中に精子を一匹入れる方法になります。

顕微授精

胚移植

採卵時に⼦宮内膜の状態が適切であれば、採卵した周期に合わせて胚を⼦宮へ戻します。しかしながら、⼦宮の状態が整っておらず、胚を⼦宮に戻しても妊娠の可能性が低い場合は⼀旦胚を凍結保存し、⼦宮の状態を整えてから胚を再び⼦宮へ戻すことがあります。⼦宮の状態を整えるために、ホルモン剤を補充し⼦宮の状態が整ってから胚を⼦宮へ移植する⽅法と、薬剤を使⽤せず⾃然に⼦宮の状態が整うのを待ってから胚を子宮へ移植する⽅法の2つがあります。⼦宮に移植する胚の種類は分割胚もしくは胚盤胞の状態で戻します。胚が複数ある場合は最も適切な状態の胚を使⽤します。

ホルモン補充周期下凍結胚移植

前周期から薬剤を使⽤して卵胞の発育を抑えながら女性ホルモンを投与して⼦宮の状態を整えます。胚を妊娠に最適な状況の⼦宮へ移植する⽅法です。この⽅法は、⾃然の排卵周期では⼦宮内膜が厚くなりにくい⽅などが対象となります。

⾃然周期下凍結胚移植

薬剤のアレルギーがある⽅や、⾃然の排卵周期で内膜の厚くなる⽅、ホルモン補充周期下凍結胚移植でなかなか妊娠できなかった経験のある⽅などが対象となります。⾃然の排卵周期に合わせ、排卵のタイミングから胚の状態と同期した状態で⼦宮へ胚を移植します。ただし、⾃然の排卵周期をこまめに追っていく必要があり、上記の⽅法と⽐べて来院回数が多くなります。

⾃然周期下凍結胚移植

着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)

体外受精によって得られた胚を移植前に調べる検査で、欧米では流産防止目的で広く実施されています。当院では2021年に日本産科婦人科学会の多施設共同研究に参加しております。