先輩からのメッセージ

河野 由莉

 こんにちは。今、このページを見てくださっている方は、「脳神経内科ってどんな病気を診る科?」とか、「どんな研究をしているのかな?」とか、はたまた「明日から実習・研修だからどんな先生がいるのか知っておこう」とか、そんなことを思っていらっしゃるのかな、と想像しながら文章を書いています。

 自分が学生のとき、脳神経内科領域の勉強をしていて、「病変側と症状が出る側が違うなんて、訳がわからない!」「脳を診るだけじゃなくて、脊髄や末梢神経、筋肉まで診るなんて、範囲が広すぎる!」と距離を置きたくなったことを覚えています。

 その後何の因果か、初期研修で脳神経内科をローテートさせていただいた際に、患者さんの診察をして、病変部位を考えて、画像を取ってみて、自分が考えていた病変部位と一致したときの感動が忘れられず、今もこうして脳神経内科医を続けている自分がいます。

 脳神経内科は病態が解明されていない病気や根本的な治療法がない病気が多い科です。しかしながら、最近では、脱髄疾患や免疫疾患に対して新薬が開発されたり、デバイス治療が進歩してきたり、これからどんどん治療の幅が広がってくる科でもあります。

 見学や実習・研修に来られることがありましたら、一緒に患者さんのお話を聞いたり、診察したりしてみませんか。お待ちしております。

西垣 明哲

 ここを読んでいる皆さんの背景も興味もさまざまだと思いますので、自分の話をします。
 私が脳神経内科を志望したのは医学部の4年生の時で、左半側空間無視のある患者さん(中枢性の炎症性病変が原因)を担当した時でした。

 左半側空間無視とは脳の右頭頂葉の障害により、左の半分の視野を認識しなくなってしまう病態です。目が悪いわけではないので見えてはいます(試しに左目をつむってもらうと分かりますが片目でも物は見えます。)。 
 しかし、患者さんは道路を歩けば電信柱に左側をぶつけるし、左側にしか曲がれない道では立ち往生してしまいます。患者さんの中では左側の世界が無くなってしまうのです。
 脳の障害部位は一部ですので、手足も動けば言葉もしっかり話すことができ、見た目からも何も異常はありません。言葉を尽くして自分の症状を詳細に教えてくれました。
 今ではリハビリのおかげで、左側に首を振って見るようにしているが、”存在しない世界”を見るようにするのは大変、暗くなったり白くなったり霞んだりする訳ではない、とのことです。 繰り返しになりますが、目の病気ではないので見えない訳ではなく頭頂葉が作る全体像、つまり半分”無い世界”の中を暮らしているのです。

 ふしぎ、ふしぎ、ふしぎ、です。
 こんなふしぎを毎日見ているのか、と脳神経内科の志望を決めました。
 色々な不思議を患者さんは訴え、困り、それでも頑張ってリハビリをしながら、脳神経内科医は一緒に長い長い期間治療をしていきます。
 「足が勝手に動くんやわ」、「幽霊が見えるんよ」、「顔がだらんと垂れてしまって」、、、こんなふしぎに、「それはね、、」と答えを出すことができる脳神経内科医はとてもかっこいいと思いますし、治療をすることで、ふしぎに対する答えが出ることはとてもエキサイティングなことだと思っています。
 しかし僕もまだまだ若輩者であるので、今のところは勉強をするたびに、あ、あの時の患者さんの言葉、症状はコレだったのか、と日々学び、悩み、気づきを得ながらNeurologyの道を極めようと頑張っています。そんなつらくも楽しい、長い長い道のりをできるだけ多くの人と一緒に進んでいけたらよいなあ、と思っています。



榮 厚輔

 脳神経内科専攻医2年目の榮厚輔です。

 私が脳神経内科を志した理由は「患者を診る」ことに長けている点です。

 患者の訴えを聞き、身体診察から異常を発見し、検査,治療に繋げるプロセスはいつの時代でも変わりません。検査技術が発達する中で蔑ろにされがちな身体診察や問診を大切にしています。

 患者さんから「こんなに丁寧に話を聞いて診察してもらったのは初めてだ」と感謝されることもしばしばです。
 こう言ってもらえる診察のエッセンスを学べる環境が三重大学脳神経内科にはあります。 皆さんも一度のぞいてみませんか。