消化器・肝臓内科の軌跡と変革

高安 正夫教授【京大医卒】

昭和24(1949)年~昭和40(1965)年

三重県立大学附属病院(津本院と高茶屋分院)の分院として、昭和23(1948)年、四日市に大学附属塩浜病院が開院、翌昭和24(1949)年6月高安正夫教授が就任、第三内科講座が誕生する。心房の興奮伝播が教室のメインテーマであり、細胞内微小電極を用いた動物実験、ベクトル心電図、血管造影を行う。消化器領域では、昭和30(1955)年頃X線二重造影を、昭和38(1963)年胃内視鏡検査を開始する。

宮地 一馬教授【九大医卒】

昭和41(1966)年~昭和57(1982)年

代謝、消化器部門の強化として、消化器領域の研究ではトランスフェリンと肝再生、ビタミンB12のアイソトープによる腸管吸収実験が、臨床では生検を含めた内視鏡検査の充実が図られ、当時胃Ⅹ線二重造影法の中心であった白壁研究室へも研修に赴く。昭和48(1973)年には附属病院が江戸橋に統合され、昭和49(1974)年に臨床研究棟が完成、本格的な生化学、電気生理学の研究が可能となる。

鈴木 司郎教授【京大医卒】

昭和58(1983)年~平成5(1993)年

教授の専門は肝臓病・感染症学、教室は呼吸器、代謝・内分泌、消化器とウイルス性肝炎を中心とした肝臓病の4領域から構成された。前任地・新潟大学の協力により腹腔鏡・肝生検、肝生検病理の研修を行い、診療レベルの向上を図る。研究ではHAV持続感染系の樹立と細胞障害機序(A型肝炎研究班)、非B非C型肝炎血清におけるDNAポリメラーゼ活性、HCV粒子の電顕的証明、Campylobacterの胃粘膜障害機構、腫瘍免疫に関する研究など、多くのプロジェクトが行われた。

嶋 照夫教授【三医大卒】

平成5(1993)年~平成8(1996)年

当教室出身の嶋助教授が新教授に選出され、これまでの診療、研究成果を発展させることが期待されたが、病を得てその実現が困難となった。

足立 幸彦教授【京大医卒】

平成9(1997)年~平成18(2006)年

平成10(1998)年臓器別の診療体制へ移行、消化器、呼吸器、糖尿病・内分泌、リウマチ・膠原病を受け持つことになる。肝臓グループは、教授の専門である体質性黄疸の遺伝子解析、胆汁酸トランスポーターの発現調整、HCVの増殖機構と免疫応答、鉄過剰と肝障害に係る研究を行う。消化管グループはH. pylori研究の継続と共に、教室のGabazza先生の協力により凝固・線溶因子の消化管障害機構を解析する。その成果として、2005年11月第36回日本肝臓学会西部会を主催する誉に預かる。難治性肝炎の新規治療、ラジオ波治療、超音波内視鏡、内視鏡的粘膜切除の導入など臨床面も充実された。
平成16年(2004)年の独立行政法人化に伴い、第三内科は3診療科(消化器・肝臓内科、糖尿病内分泌内科、呼吸器内科)へと移行する。

竹井 謙之教授【阪大医卒】

平成19(2007)年~令和3(2021)年

消化器内科学教授としての着任と同時に、呼吸器と糖尿病代謝内科の講座主任にも就任。肝臓分野では、教授の専門である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)・アルコール性肝障害、バイオマーカー、臓器間連繋を担う病態情報伝達体を探求する。消化管分野では拡大内視鏡による診断法の開発を、胆道・膵臓分野では超音波内視鏡下針生検材料を用いた膵疾患の診断と予後、尿バイオマーカーを探索する。診療面においては、肝臓、消化管、胆膵の3グループが有機的に機能し、高度で低侵襲な診断・治療手法を導入、豊かな治験から最新の治療薬へのアクセスを提供した。また、肝炎相談支援センターを開設、県内の肝疾患の診療ネットワークの中心的役割を果たしている。これらは、2020年11月第24回日本肝臓学会大会の主催に結実する。

中川 勇人教授【三重大医卒】

令和3(2021)年~

消化器内科学教授に着任、三重大学消化器内科同門会を立ち上げた。現在、県下全関連病院の協力のもと三重発の診療エビデンスの創出を目指している。また、現教室はオミクス解析、組織幹細胞・癌起源細胞の同定、細胞外小胞単離技術、位置情報と発現情報の統合解析など最新の研究手法を有しており、今後多くの研究成果の発信が期待される。

文責 岩佐元雄