膵がんとは

膵臓から発生する腫瘍は、浸潤性膵管がん、腺房細胞腫瘍、膵管内腫瘍、漿液性腫瘍(SNs)、粘液性嚢胞腫瘍(MCNs)、神経内分泌腫瘍(NENs)などがありますが、90%以上は浸潤性膵管がんであり、一般的に膵がんといえば浸潤性膵管がんを指します。
膵がんは難治がんの代表であり、外科的に切除することが長期生存を可能にする唯一の治療です。なお、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMNs)は腺腫(良性腫瘍)、非浸潤がん、浸潤がんに分類されて浸潤性膵管がんと比べると治療成績が良く、「予後良好な膵がん」ともいわれます。

症状

膵がんに特有の症状はなく、他に原因のみられない腹痛、腰背部痛、黄疸や体重減少は膵がんを疑って検査を進めることが重要です。切除が可能な患者さんでも症状がない人が15%を占めるため、「沈黙のがん」ともいわれます。

膵がんになりやすい人(=ハイリスクグループ)

生活習慣では喫煙と肥満であり、その他では家族歴、糖尿病、慢性膵炎や膵に嚢胞(IPMNs)をもつ人も危険性が高いといわれています。特に理由がないのにも関わらず急激な糖尿病の発生や悪化(血糖値が上昇する)する人は、膵がんを疑って積極的に検査を進めるべきです。

診断方法

腹部超音波での膵管拡張が発見のきっかけとなる場合がありますが、診断は小さな病変でも描出できる超音波内視鏡(EUS)と切除可能性を判断できる膵プロトコール造影CTが必須です。根治療法は手術のみですが、高度な技術が必要なため「膵がんの診断と治療ができる病院、膵がんの手術ができる医師」にて治療を行うことが望ましいです。当院は日本膵臓学会認定の指導医施設であり、当科には7人の指導医が在籍しています(2020年1月現在)。

膵がんのステージ(Stage)と切除可能性分類

膵がんのステージと患者さんの割合は、Stage IIBまでががんが標準的な術式で切除が可能な患者さん(手術ができる: 全体の約20%)で、Stage IIIは大血管にがんの浸潤があるため切除が困難となる患者さんです。
Stage IVはがんが肝臓や肺、腹膜などの遠隔臓器に転移がある患者さんです。外科的な立場から膵がんを分類すると、標準的な手術で切除が可能な場合を切除可能膵がん(R: resectable)、血管や周囲臓器への浸潤があるため切除がきわどい場合を切除可能境界膵がん(BR: borderline resectable、BR-PV門脈系への浸潤のみ、BR-A動脈系への浸潤あり)、大血管への浸潤があるために切除が不能と判断される場合を局所進行切除不能膵がん(Locally advanced unresectable: UR-LA)、遠隔転移があるために切除不能と判断される場合を切除不能遠隔転移膵がん(metastatic unresectable: UR-M)といいます。

膵がんの治療

膵がんに有効な抗がん剤としてゲムシタビン、S-1、FORFIRINOX療法(3種類の抗がん剤併用)、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法などが登場し、進行膵がんのみならず切除後の補助療法としても有効性が示されています。最近では切除可能膵がんにおいても術前治療を行うことを推奨されております。
当科では膵がんの治療成績をさらに向上させる目的にて、新たな治療法として「手術を前提とした抗がん剤と放射線療法を組み合わせた化学放射線療法(CRT)」を2005年から行っており、良好な治療成績が得られております(図)。
最近では遠隔転移を来していても根気強く抗がん剤治療を行って手術が可能となった患者さんもおられます。
また、2018年からは主要動脈に接触している膵がん(対象: BR-AおよびUR-LA膵がん)に対してはゲムシタビン+ナブパクリタキセルを用いたCRTを特定臨床研究にて開始しており、良好な成績を期待しております。

(図)Protocol of chemoradiotherapy followed by surgery(CRT-S)

Mie University Hospital / 2005.2〜2019.12 (n=427)

膵がんの手術と成績

遠遠隔転移を来していない膵がんに対して、当科では2005年から2019年の間に427人にCRTを行いました(図)。
393例に再評価が可能であり、適格症例に対して膵切除を施行しております。高度な技術を要する血管合併切除の門脈合併切除も約90%に積極的に行っており、肝動脈切除再建術も形成外科医師と協同して安全に施行しています。
治療成績は、切除可能性分類別にみると、膵切除例においては切除可能(R)、切除可能境界(BR: BR-PV、BR-A)、局所進行切除不能(UR-LA)の3年生存率は、50.7%、42.5%、41.8%、26.4%と良好な成績が得られています。
遠隔転移(肺、肝臓、傍大動脈リンパ節、腹膜播種など)を来した膵がんに対しても、2005年から2018年の間に化学(放射線)療法を継続することにて、17.2%(17/99)の症例が膵切除(conversion surgery)可能となり、切除例での3年生存率は47.1%と治療成績の改善を認めています。

局所進行膵がんに対する術前化学放射線療法後の治療成績 切除可能分類(膵がん取り扱い規約第7版)からみた累積生存率

三重大学 肝胆膵・移植外科 / 2005.2〜2019.12(再評価が可能であった症例 n=393)

三重大学における膵切除実績

三重大学 肝胆膵・移植外科 / 2013.1〜2020.12